「もうねぇ! 若い頃は見てくれが良いとか、多少金を持っているとか目の前の事ばかり気になるけどね! 男は誠実さが一番だよ! ちょっとぐらい金を持ってたって、ろくでなしじゃあっという間に文無しになっちまうからね」 なんだか、荷台でアナマの演説が始まってしまった。「さすが姉さん、参考になりますだ」「そりゃ伊達に長く生きてないよ」 まぁ、アナマと女達は20歳ぐらいは歳が違うだろうから、それなりの人生経験に裏打ちされている発言ではある。「じゃあ、ケンイチの旦那みたいな人かい?」「ああ、ダメダメ。ああいう人は女なんてどうでも良いのさ」「ギクッ!」「自分のやりたい事があれば、女なんて捨てちまって、どっかへ1人で行っちまう人だね」「ギクッギクッゥ!」 クソ、さすがに長く生きてねぇな。俺の本質を見抜いてやがる。「にゃ~! それじゃ、うちは愛人で良いにゃ~」「まぁ、遊びならそれでも良いんじゃない? でも、すぐに捨てられても、泣くんじゃないよ?」「にゃはは」 ミャレーはケラケラと笑っているのだが、嘘なのか本気なのかよく解らん。「ケンイチさん――アナマさんの言ってる事は本当なのですか?」「まぁ、当たってるかねぇ……俺は趣味に生きる人間だからな」「……」 ずっと荒野だが電信柱の一本も無い長閑のどかな風景。高い建物など一切無いので空が広く、地平線まで見渡せる。 これまた長閑のどかな村々を巡り女達を故郷へ返していく。村まで送ると、どんな愁嘆場が待ち受けているか解らん。 そういう場面に皆を巻き込みたくない――という思いも、故郷へ帰る女達には、あるのかもしれない。 昼過ぎにパンを配って、軽い食事にする。 この世界では農家などは皆が1日2食だ。1日3食、食うのは街の商人ぐらいだな。基本は朝晩でドカ食い。 だが貧しければ、そのドカ食いも出来ないのだ。 午後3時頃に、一番遠くの最後に村へ到着して、女を1人降ろした。 ペコリと頭を下げて、村へ歩く女を見送りながら、トラックをダリアに向ける。「もう、夕方になるよ? こんな遠くの村から本当にダリアの閉門前に着くのかい?」 まぁ、アナマの疑問ももっともだ。