「いいや、それはまずない。あいつはボイスレコーダーを使っていたんだ。それでお前に逃げる事は出来ないと言ってきただろ? もし平等院が嘘をついていたらお前は勝負を無効にすることが出来るのに、あいつがそんなヘマをすると思うか?」「あ、いや……それはないかも……」「だろ? だから、あいつがとる戦略は単純なんだよ。そして最も確実であり、尚且つ株の知識がある人間なら絶対にしない事だ」 多分、雲母の頭にも一瞬くらいはその考えが過よぎっていたはずだ。 だが、それはまず無いと思い直し、もう気にしていなかったと思う。「その戦略って?」「それは――」 俺が説明をすると、雲母は凄く驚いた表情をした。「何それ!? あいつ狡すぎでしょ! 完全に犯罪じゃない!」「そうだな。だが――あいつはそうならない様に、手を回すだろう」「だったら、どうしたらいいの? こっちに勝ち目がないじゃん」「だから俺が降りるべきだと言ったんだろ……?」「あ――そうだった……」 俺が呆れたように言うと、雲母がシュンっとした。 こいつのこんな表情は中々見る機会がないよな。 ……まぁ、見たくもないがな……。「心配しなくてもいい、ちゃんと勝たせてやれる」「ほ、本当……?」「あぁ、その代わり――俺に人生を掛けてくれるか?」 俺は真剣な表情でそう雲母に尋ねるのだった――。2 俺が雲母の人生を俺に掛けて欲しいと言ってから、数分後――雲母はゆっくりと口を開いた。「うん、掛けるよ。だって、海斗が凄いって事は私が良く知ってるし。それに――どっちみち、これで私が負ければ私の人生は終わるから……」 雲母は俺に笑顔を見せた後、苦笑いをしながら自分の人生が終わる事を言った。 そう、この勝負は元から雲母の人生が掛かっている。 だから、それを俺に掛けるのは聞く限りでは大して変わらないだろう。 だけど、自分の人生を他人に託すと言うのは、簡単にできる物じゃない。 俺は俺を信じてくれた雲母に感謝をする。 そして、雲母をここまで追い詰めたアリアにはそれ相応の罰を受けてもらうつもりだ。「じゃあこれからの流れを説明するが――その前に、雲母は株の流れを読むのにどれだけ自信がある? これも正直に答えてほしい。なんせ、この勝負の鍵になるのはお前なんだから」 この勝負は元々雲母とアリアの勝負だ。 俺はあくまで雲母に手助けをするだけで、この勝負は雲母の手によって勝てたとするのがベストだろう。