「せっかく家が空いているんだから、家で寝たら? お城の自分の寝室で寝てもいいんだぞ?」「ケンイチと一緒がいいのじゃ!」 リリスはいいとして、アマランサスは?「妾は奴隷なので、聖騎士様のお側におるわぇ」 その前に、「妾」とかいう奴隷がいるのかよ?「俺が辺境伯になって、正室はリリスってことになるんだろうけど、アマランサスはどうするんだ? それとも、アマランサスが正室になるのか?」「妾は奴隷ぞ? 奴隷が正室になるはずがあるまい。側室だってありえぬ」「それを言ったら、リリスだって王族籍を抜いたんだ、彼女も平民だろ?」「妾は完全に見放されたが、リリスは復帰の道を残している故」「ふ~ん、まだ円卓会議の駒として使える余地が残っているから、接触してくる可能性があるってことか?」「そのとおりじゃ」 させるかよ、そんなこと。 結局、皆外に寝ているから、家に泊まるやつがいないじゃないか。「ミャレーとニャメナ、家のベッドで寝ても良いぞ?」「ええ? 旦那が外で寝てるのに、俺たちが中で寝れないよ」「そうだにゃ」 気にすることはないと思うんだが……。「それじゃ、俺たちが中で寝るか……」「妾は外で寝るわぇ」 アマランサスは奴隷に徹するため、外で寝ると言うのだが……。「アマランサスも中で寝よう」 俺にそう言われれば、奴隷契約しているアマランサスは逆らえない。 皆で暗い家の中に入ると明かりを点けてベッドの準備をする。ダブルベッドを2つ出せばいい。 俺たちと一緒に、メイド長のマイレンさんも入ってきた。「わ~い、広い!」 ベッドの上でアネモネが跳ねているのだが――。「広いベッドが良いなら、アネモネが一人で家で寝ればいいのに……」「ケンイチと一緒じゃなきゃ嫌!」「妾もじゃ!」 アネモネとリリスが一緒に抱きついてきた。「どうだ、アマランサス? 狭いだろ?」「確かに狭いが――天幕で泊まっていると思えば、どうということはない」「まぁ、在所に帰ったら、大きな屋敷も建てるつもりだから。家は広くなると思うけけどな」「大きな家を建てるの?」 アネモネの目がキラキラと光っている。「人数も増えるし、メイドさんも10人ぐらいついてくるそうだから、その人たちの部屋も用意しなくちゃならない」「ずいぶんと女の人が沢山増えるんだね……」 女が増えると聞いたアネモネが少々不機嫌だ。