俺は、今日も車に乗って獲物を探していた。
狙いは一人で下校中の小学生の女の子である。
この近くの小学校はまだ集団登下校も行っていなくて殆ど無防備で、通学路も人
気の少ない場所が多く、犯行が行い易い環境にあった。
しかも、田舎で危機意識も薄い為か、防犯ブザーも持っていない。
捕まりにくくする為に、同じ場所では2度と犯行を繰り返さないと決めていた俺
が、これで3度目の犯行の犯行を企てているのは、その為である。
ゆっくりと車で通学路を逆走していると、前方に黄色いチューリップ型の通学帽
をかぶった二人の女の子が見えた。
二人とも近所の小学校の制服である紺色のブレザーとスカート、そして鮮やかな
赤のまだ新しいランドセルを背負っている。
2年生……、いや、あのランドセルのピカピカ具合は1年生だろうか。
特に、右側のしっかり者っぽい顔立ちの、背が高くて髪の長い女の子は、俺の好
みのタイプだった。
何とか一人にならないだろうか……。
俺は速度を上げて一旦二人の横を通過し、側道に車を停めて様子を伺う。
二人はその先の突き当たりまでスカートを揺らして歩き、そして、バイバイの仕
草をして、何とも都合の良く右と左に分かれた。
俺はあまりに出来すぎた展開に自然とにやけ、車を発進させる。
あの子は右側の道に入っていった。右側の道は、下調べをした時には人通りも少
なく比較的声を掛け易そうだった。
さて、あとはどうやってあの子を誘拐するかだが……。
しっかりしてそうだったので、お菓子や玩具では釣られないだろう。
となると、お母さんが病気だとか言って騙すか。
いくらしっかり者でも子供は子供。それらしい事を言えば、大抵は信用する。
まあそれでも、近頃は声をかけるだけで逃げられて困っているのだが……。
俺は突き当たりを右折し、女の子を追い越して窓を開けて顔を出し、女の子の名
札を覗き込んだ。
やましたあいちゃんか……。可愛い名前だ。
さて、真剣な顔に切り替えて、っと……。
「もしかして、やましたあいちゃん……?」
「えっ?」