まだ恨みがましくシロを見つめるウェンディだが、シロはそんなこと何処吹く風といわんばかりに俺の上でごろごろと座りを変えている。「そんじゃ布をつけたらテラスで皆でお昼寝といきますか」「食べてすぐ横になると身体に悪いんですよ?」「今日だけ今日だけ」「もう。本当に今日だけですからね」おなかも膨れたし、ぽかぽかの陽気で外の風を感じながらお昼寝なんて元の世界でもなかなかできることじゃない。異世界最高。スローライフ万歳。さっそく作り上げたフレームにシロが買ってきた布をきつく巻きつけていく。シロが買ってきた布は、普通の布より強度が高く伸びにくい素材で水はけもいい布であったので加工せずそのまま使えるものだった。弛まないようにシロにも手伝ってもらいながら一つ目が完成し、それを魔法空間で収納すると、もう一つの椅子に手をつける。こちらは弛ませなければいけないので巻きつけるわけにはいかないのだが、幸いにもウェンディが裁縫スキルを持っていたので、ゆとりをもって縫い付けてもらった。ふう。とりあえず完成だな。今日はこれでゆっくりお昼寝といこう。早速三人でテラスに出ると、魔法空間から二つの椅子を取り出して日向に並べる。俺は広い方の椅子に腰をかけると全身を預けてリラックスした。涼しい風が吹き、暖かな日差しとともになんともいえない夢見心地な気分である。「失礼します」「ウェンディずるい」「ずるくありません。早い者勝ちです」ウェンディとシロが争うように俺の隣を奪い合い始めた。「こら暴れるな。簡単なつくりだから壊れるぞ。それにシロ今回は譲ってやれ」「やー! 主と寝るの!」「私もです! シロばっかりずるいです」「じゃあ俺がそっちで寝るから、二人は」「それじゃ意味無いんです!」「やあー」さいですか……。せっかく作ったのにな。「わかった。じゃあ片方ずつ両サイドで大人しくしててくれ」「別にシロは上でもいい」「それは暑いからだめ。今日はゆっくりしたいんだよ」「うーわかった」「私も、ご主人様とお昼寝ができるなら構いません」「じゃあ寝ようぜ? こんな気持ちのいい日に昼寝しないなんて考えられん」ふわあっと欠伸を一つ。目はもうとっくにお休みモードである。「ん……」「狭い……」広めに作ったとはいえどう詰めても三人用ではないので狭い。だがぎゅうぎゅうと押し付けられる肉感は俺の鼓動を早めるが、それも含めて極楽である。「主、腕」「はいはい。これでいいか?」腕を伸ばすとシロは頭を乗せてベストポジションを探してもぞもぞと動く。「あの、ご主人様?」「分かってるって」両腕を伸ばしながら寝るって寝にくいんだけどな。ウェンディだけ駄目って言うわけにもいかないだろう。「真似っこ」「い、いいじゃないですか」それにしてもウェンディってこんなにぐいぐい来るタイプだったか?どちらかと言えばしずしずと一歩後ろを歩くような大和撫子のような女性だったと思うのだが。それにシロも我が強くなったというか、ここまでわがままだっただろうか。まあでも俺が言った、してほしいことを素直に言うのは嬉しい限りだ。その分俺もお願いしやすいしね。そんなことを考えていると隣からすーすーと静かな吐息が聞こえる。早速シロは寝てしまったようだ。「んじゃ俺も寝るかな……ふわああ」「おやすみなさいませ。ご主人様」「ウェンディもおやすみ」俺この世界に来てから誰かと一緒に健全に寝ることが多くなった気がする。ただ少し暑い。起きたらこれをもっと広く使えるように作り直そうかな。でもそうなると布がへたりやすいんだよなあ。あーでもない、こーでもないと考えながらいつの間にか俺の意識は落ちていった。