「ケンイチ、この卵もお願いにゃ」「まぁ、割れたら大損だからな」 卵は5個、全部で1万円か――しかし、これは売値だ。卸値は5千円ぐらいだろう。「なんじゃこりゃ!」 熊肉のステーキを食った、ニャメナが叫んだ。「どうした? 口に合わなかったか?」「逆だよ、美味すぎるんだけど。でも、なんだろうこの香りはワインじゃないだろうし……」「ああ、熊肉の臭いを消すために漬けた酒の匂いだよ」「酒?! 旦那、ちょいと頼みがあるんだけど」「なんだ?」「今日の獲物を全部あげるから、その酒を飲ませてくれないかな」「ああ、少しだけならいいぞ」 俺は、カップを出すと、アイテムBOXから出したブランデーを半分だけ注いだ。料理に使うので、1本1000円ぐらいの安いやつだ。「かなり強い酒だから、注意してな」「おお、いい香り!」 そして、ニャメナがブランデーを一口含むと黙った。「どうした?」「ああもう、俺はこんな贅沢をして、街で暮らすのが辛くなっちまうよ。こんなの味わっちまったら、街で飯が食えないじゃないか」「自分が不幸なのを知らないってのは幸せなんだぜ」「とほほ……」「にゃぁ! 美味いにゃ! ニャメナじゃないけど、熊肉がこんなに美味くなるにゃんて」「美味しいね」「これだけで、高級店が開けますわ」「俺は興味がないから、プリムラが料理を教えて誰かにやらせればいい」「けど、ケンイチが持っている美味しいお酒がないと……」「酒造りは専門じゃないから、どうやって作るのかは解らないなぁ。けどワイン煮なら出来るな」「でも、あのワインも貴族が飲んでいるような上等な物ですよ?」「ああ、ノースポール男爵も、そう言っていたな」 プリムラと話していると、ニャメナが絡んできた。「もう! どうしてくれるんですかぁ、こんな美味い物知っちゃ街に住めませんよぉ!」「俺のせいじゃないだろ。こいつ、絡み酒か?」 抱きついてくる彼女を引き離そうとするのだが、獣人のパワーで掴まれたら逃げられない。「ふぎゃー! 離れるにゃ!」「別に盗ったりしないよぉ。飯だけ食わせて、近くに住まわせてくれればいいんだから」