【第五章】出発、そして追跡 リオがクリスティーナとフローラを岩の家に招き入れてから、三日が経たった。二人が失踪した日から数えると五日だ。 この三日の間でフローラの体調はすっかり回復し、いよいよガルアークの王都に向けて出発することになる。 午前中の内に岩の家の外に出ると――、「保管魔術ストレージ」 リオは呪じゆ文もんを詠えい唱しようして、岩の家を時空の蔵くらに収納した。空間が歪ゆがみ、巨きよ大だいな岩の家が忽こつ然ぜんと姿を消してしまい――、「…………」 クリスティーナとフローラはぱちぱちと目を瞬しばたたいていた。時空の蔵に関する説明もこの三日間に受けてはいたが、性能が常識から逸いつ脱だつしすぎているせいでいまいち現実的な実感が湧わかない。「では、行きましょうか」 リオが振り返って二人に言う。「はい」「よろしくお願いいたします、ハルト様」 クリスティーナとフローラはそれぞれぺこりと頭を下げる。「抱だきかかえ方かたは……三日前と一緒でよろしいでしょうか?」 リオがクリスティーナに確認する。すなわち、クリスティーナがリオにおんぶしてもらい、フローラがリオにお姫ひめ様さま抱っこをしてもらうのだ。「……構いません」 リオに背負ってもらって密着した時のことを思い出したのか、クリスティーナがほんのりと頬ほおを染めて頷く。「そういえば、いったいどうやって運んでもらったのでしょうか?」 フローラは岩の家まで気絶したまま運ばれたので、不思議そうに首を傾かしげている。「恐おそれながらクリスティーナ様を背負い、フローラ様を両りよう腕うでで抱きかかえさせていただきました。今回もそれで構わないでしょうか?」 リオがフローラに説明する。「え、ええ? あ、で、でも、そうですよね。は、はい。大だい丈じよう夫ぶです」