そんなギルドメンバーたちだが、今や、そろいもそろってネズミになってしまっている。 ネズミ野郎とジュニッツを散々バカにしてきたのに、自らネズミになってしまったのだ。「う、うそだろ、こんな、おい……」 みな、恐怖と絶望で震え上がった。 これから先の人生を想像してしまったのだ。 ネズミの顔である。 みじめな顔である。 これから先、一生笑い者にされるのだ。 愚か者として蔑まれ、ネズミとして笑いものにされ、会う人会う人からバカにされ、見下される人生が待っているのだ。 苦痛と屈辱に満ちたそんな人生が、ずっとずっと死ぬまで続いていくのだ。死ぬまでずっと……。「ひ、ひい、いや、いやよ、そんな人生いや……」 ジュニッツを笑いものにし、過去に何度もリンチしてきた受付嬢が悲鳴を上げる。「うわあああああ! やだ! やだあああ! こんな顔なんてやだああああああ!」 痛みを与える『ショック』というスキルで、過去に何度もジュニッツを苦しませて楽しんでいた冒険者の男が、絶叫する。 建物内にいる全ての冒険者とギルド職員が、一生ネズミ顔で生きていかなければいけないことに、絶望の叫び声を上げる。 正確には、一生とは限らない。『愚か者への罰』は、時間が過ぎれば解ける。 時間の長さは、どれだけひどいことをしてきたかに比例する。 要するにジュニッツに対して、ひどいいじめをしてきた者ほど、ネズミの顔でいる期間が長いということだ。 もっとも、冒険者ギルドの面々は、そろいもそろって、相当ひどくジュニッツをいじめてきた。 新人を除けば、下手すると全員一生ネズミの顔のままだろう。「やだよぉ、ママァ! 助けてよぉ! 僕、こんなのやだよお!」 この世の終わりのようなユリウスの金切り声が、栄光ある冒険者ギルド内に響き渡るのだった。