「なんだって?」 プリムラ達を街へ送った後――畑仕事をしていた俺に、ミャレーが面白そうな事を言ってきた。「ダンジョンにゃ!」「ダンジョン? ダンジョンって地下へ降りる洞窟とかそういうのか?」「その通りだにゃ」 彼女は話では、ダンジョンには2種類あるらしい。 自然に出来た洞窟や風穴に魔物が住み着いたダンジョン。もうひとつは遺跡などの人工物に魔物が住み着いたダンジョンだ。 人工物のダンジョンの方は、過去の遺物や魔道具、魔導書等が見つかる事が多く、実りも大きい。 無論ゲームではないので、一度攻略されてしまえば、お宝が再ポップしたりはしないわけだが。 ただ長い時間を経れば、また魔物が住み着く可能性はある。 だが、お宝もなく魔物しか住んでいないダンジョンに潜る奴はいないそうだ。 そりゃ、この世界じゃ経験値もなく、レベルアップして強くなるわけじゃないからな。 魔物の素材も、それなりに金にはなるが、そんな危険を冒すよりは、お宝を探した方が効率が良いってわけだ。 彼女の話では、昨日見つけたと言う。「夕飯の時に、そんな話は出なかったが?」「そんな話をしたら、あのトラ公も来るじゃにゃいか」「お前ら、そんな事で張り合うなよ」「これは獣人同士の問題にゃ」 だが、ミャレーが気になる事があると言う。「気になる事?」「虫の臭いが強いにゃ。多分、デカい虫の巣になってる可能性が強いにゃ」「虫か……でもとりあえず、行ってみたいな」「にゃ」 ミャレーと一緒にダンジョンへ潜る準備をしていたら、アネモネがやって来た。「私も行くー!」「遊びに行くんじゃないんだぞ? 魔物がいるかもしれないし」「ケンイチの冒険を助けるって、私が言ったでしょ!」 俺と初めて会った時は物言わぬ少女だったが、最近自己主張が強い。「だが、俺とミャレーがダンジョンに潜ったら、アネモネが家に1人か――どの道危険のような……」「だから一緒に行く!」「解った解った」「わーい!」 一度怖い思いをしたら、一緒に行くと言わなくなるかもしれない。 ダンジョンへ潜ると言っても、プリムラを迎えにいかないとダメなので、タイムリミットがある。 時計を出して、時間を確かめる――遅くても4時頃には迎えにいかないと。「ミャレー、どのぐらい離れた場所にあるんだ?」「ここから北へ半時(30分)程の所にある、崖の割れ目にゃ」「半時ってお前の脚で半時だろ?」「そうにゃ」 ――と言う事は、ここから10㎞ぐらい離れた場所だ。結構奥地だな。