だから彼女の事を嫌うと同時に、同情もした。 育ての親や周囲の人間のアリアに接する態度が違えば、こいつは立派な人間になれたかもしれないのに。 正直言えば、アリスさんが雲母を嵌める知恵をアリアに教えたとは思えない。 なぜなら、俺はその当時のアリスさんを知っているからだ。 この人は頭がかなり良いし、俺よりも数歩先の未来を見据えてる所があった。 なのに、生徒全員を巻き込んで雲母を追いつめればどうなるかを、アリスさんがわかっていないとは思えなかった。 だから、そんな事をアリアに教えたりしていないんじゃないだろうか。 そこから考えられるのは、アリスさんがアリアを庇っているという事。 つまり、アリアにキレた俺がやり過ぎない様に、怒りを自分にも分散させたんじゃないかと。 ただそれは、血が繋がった妹だから庇ったのか、他に理由があるのかは知らない。 しかし、妹をマトモな人間にしたいという考えは共感できる。 だから俺も協力しよう。 ただし、それは俺のやり方でだ。 俺はアリアに同情し、マトモな人間に戻してやりたいと思う。 そして、雲母が味わされた思いをアリアにも味わわせたい。 だから――俺は徹底的にアリアを追い込み、絶望させる。「――さぁ分かったところで、あんたの方の株を見せてみなさいよ。どうせ真面目にコツコツ株を買っただけなんでしょ?」 アリアはそう言って、雲母が既に結果を表示しているであろうスマホを奪い取る。 そして――画面の表示を見た瞬間、アリアの顔は驚愕な表情になり、雲母が顔をニヤつかせる。 アリアが見たスマホの画面には――『313,500円』と表示されているのだった。