それは昨夜の悪戯よりもずっとずっと分かりやすいものであり、だからこそ彼の顔から恐れの感情は消えてしまう。「大切な女性をね、守りたいと思うのさ。君の周りにいる女性のように、泣かせることなど許せない……なんて口に出してしまうと臭い言葉になるね」「はっ――生身を持ってから随分と分かりやすくなったなぁ。なに、俺は奪う者だ。寿命を迎えるその日まで諦め続けろ、幻影」 こちらにとって楽しいホラー回は終わり、彼という強大な化け物と剣を向け合う。 それはきっと僕のわがままであり、魔導竜の望むことでもあるだろう。 逆光のせいか彼の目は猛獣のように輝き、迫力ある殺気にさらされた本能は「逃げろ」とただ叫ぶ。 しかしマリアーベルにとっての悪夢が相手だ。 ならば済まないけれど、彼の旅はここで終わらせよう。 胸の奥にある感情の名を、僕はまだ知らない。 そしてマグマのように熱いそれは、間もなく名づけられる事をどこかで予感していた。