身をよじり苦しそうに笑うものだから、僕の手にした丼はガチャガチャと鳴り危なっかしい。見かねたウリドラが後ろから持ってくれたので、お礼を言いつつマリーの身体を支えることにした。 最近はふくよかになってきたらしいけど、ひょいと抱えられそうなほど少女は軽い。向こう側の腰を支えると、くつくつ笑いながらしがみついてくる。「ああ、おかしいったら無いわ。それで、お休みは本当なのかしら? 本当の本当? 嘘じゃないわね?」「もちろん。だから旅行以外にも色々と遊びに行けるよ。たとえば泳ぎの苦手なエルフさんをプールへ誘ったりね」「え、それは別に嬉しくないわ。だって泳ぐなんて疲れるだけでしょう?」 あれ、さも当然とばかりの顔をして、否定されてしまったぞ。 後ろにいるウリドラへ視線を向けると、やはり微妙そうな表情だ。「わざわざ泳ぐ意味というのは、わしにも分からん。別に疲れはせんが、何をやっておるのじゃろうなと感じるのは仕方あるまい」「そっか、残念だね。似合う水着を選んだり、水の流れるプールへ誘おうと思ったのに。そうそう、泳いだあとってラーメンとか食べたくなるんだよなぁ」 うーん、なんであんなに美味しいのかな。 冷えた身体に、あったかいラーメンをすするのは僕のなかで定番だ。普段食べるのとまるで違う味に感じるのは、たぶん気のせいじゃないはずだ。 などと思いながらエレベーターのボタンを押すと、がしりと肩を掴まれた。「待って頂戴、てっきり近くの川かと思っていたの。……それと、水着には興味あるのよ?」「待たぬか、らーめんなる食べ物とは何じゃ? 響きだけで美味そうに感じるではないか」 あれ、まったく興味無いと言ってなかったっけ? 今度は僕が目をパチパチする番になった。 さて、そんなこんなで夏のプランは着々と組まれてゆく。