デジタル秤が安いのだが、昔懐かしい上皿天秤が売っていたので買ってみた――2000円だ。 小学校の理科の実験とかで使ったな。重りがついていないようなので、重りのセットを別途購入する――1800円。 1gで50Lを凝固出来るって事はだ、0.1gで5Lか。上皿天秤でレンネット0.1gを測る。「なになに……まずは牛乳を加熱して消毒して、冷やします――か」 そして、レンネットを加えて凝固させ、湯煎しながら小さく千切って、ホエーを取り除く……えらい手間だな。 最後にまとめたら、塩水に1時間浸けた後、1晩寝かせて完成。「手間が掛かる物なのですね!」「チーズの作り方には色々と種類があるから、これが正解ってわけでもないんだ」「やっぱり、ケンイチは賢者様です!」 プリムラの俺を見つめる目がキラキラしてて、眩しい。宝石等を売った時より、きらめいていないか? そんなにチーズがジャストミートしたのか。「そんなにチーズが好きなら、もっと簡単な方法があるよ」「えっ?!」 牛乳を2L程ボウルに開けて、そこにリンゴ酢を入れる。リンゴ酢は街の市場では売っていないが、リンカー酢なら購入可能だ。 同じように使えるだろう。かき混ぜると、すぐに塊が出来てくる。 こいつを集めてガーゼで濾し、水分を適当に絞ってから塩を振れば完成。 所謂いわゆる、カッテージチーズ。「はぁぁ~これも美味しいです。そして、とても新鮮……」 プリムラは行儀悪く、指でカッテージチーズを掬うと、舌でペロペロしている。まるで子供のようだ。「そりゃ、今出来たばっかりだからな」 2人でカッテージチーズの味見をしていると、アネモネと獣人達が狩りから戻ってきた。「何を食べてるにゃ?」「こりゃ、チーズの匂いじゃないか?」「そうだ、試しに作ってみた」「ちょっと待ってくれ、旦那! チーズの作り方を知っているのかい?」「まぁな」「……旦那って、もしかして神様か何かなのかい?」 賢者から神様にレベルアップか。そのぐらい、この世界ではチーズは高級品らしい。まぁ、貴族の食べ物ってことになる。「私は、最初に会った時から、ケンイチは神様だって思ってたよ」 アネモネが、カッテージチーズを指で舐めながら、そんな事を言う。「なんで俺が神様なんだ?」「毎日、神様にお願いしてたの! 美味しい物がお腹いっぱい食べれますようにって」「ああ――それで、毎日美味しい物を食べさせてくれる俺が、神様だってか?」「うん!」 もしかしてそれが、アネモネが俺についてきた理由なのかな?