笑顔のまま硬直する。 いつも綺麗で整頓されたラウンジは死屍累々の有様だった。幾つもあるテーブルにはハンター達が死んだ目でぐったりしていて、ぴかぴかに磨かれた床には無数の酒瓶が転がっている。 最近どこかで見た光景であった。一緒についてきたルシアが目を見開き、ルークが顰めっ面で(多分)良からぬ事を考えている。 おまけに、テーブルの一つでぐったりしているのは、見紛う事なく、うちのクランに所属する中でもトップクラスの実力を持つ《黒金十字》だった。そのリーダーであるスヴェンがゾンビのような目で僕を見て、硬直する。 僕はにこにこしながらその卓に近づくと、呆然としているスヴェンの眼の前にお土産の温泉ドラゴン饅頭の箱を置いた。デフォルメされたドラゴンが印刷された箱に、スヴェンが肩をわなわな震わせ、頬を引きつらせる。 僕は肩をぽんぽんと叩き、反転し駆け出した。がたんと背後からスヴェンが立ち上がる音がする。「あッ! おい、こら待てッ! てめ――」「ルーク、僕忙しいから後はよろしく」「よっしゃあ、スヴェンッ! 俺の新技を見せてやるッ、訓練場に行くぞッ!」 帰ってきたばかりなのに元気だね……。 そしてごめん、スヴェン。僕はエヴァにお土産渡さなくちゃならないから、愚痴に付き合っている暇はないんだ。「クソッ! ……てめえらッ! クライを逃がすなッ!」 目を輝かすルークに、スヴェンが悲壮感すら感じさせる叫び声をあげた。 他のメンバーが死体が甦ったかのように顔をあげ、その目が獲物を見つけたかのように輝く。 すれ違いざまにルシアの肩を叩く。ルシアが甲高い声をあげ、もうもう鳴く。 僕は、にこにこしながら息を切らせて階段を駆け上がった。ラウンジから悲鳴が上がる。