「……ありがとうございます。この恩はいずれ必ず」 再び頭を下げ、その顔からは数滴の涙が地面へと落ちる。 そんなトレイディアを見ていたレイだったが、やがて軽く肩を竦めると、討伐隊の兵士の方へと視線を向ける。「それでこいつらはこれからどうするんだ?」「あー……そうだな」 一連のやり取りを見て驚いていた兵士だったが、やがて何かを思い出すように空中へと視線を向ける。 だが、その兵士が何かを思い出すよりも前に、もう1人の兵士が口を開く。「とにかく今回の件は片付いたんだろう? なら俺達がこいつらをアブエロまで送っていくよ。元々ランガ隊長からはそう言われていたし」「そうなのか? なら、頼む」「ああ、任せておけ。討伐隊だ何だと言っても、結局俺達がやれたことは殆ど無かったしな。そのくらいのことはやらないと、ダスカー様にも顔向け出来ないし」 小さく溜息を吐きつつ、それでも自らのやるべきことを最低限はやろうという兵士の言葉に、レイは珍しく小さな笑みを浮かべて口を開く。「そうか、じゃあ頼む。……ああ、腹が減ったらこれでも食ってくれ」 渡されたのは、ミスティリングから取り出された、10人分くらいはあるだろうサンドイッチが大量に入ったバスケット。「お、ありがたいな。けど、いいのか? お前の分は……いや、聞くまでもないか」「そうだな、俺の分はこっちに入ってるし」 右手に嵌まっているミスティリングを見せる。 ギルムの兵士だけあってレイがアイテムボックス持ちだと知っているだけに、その仕草だけで全て伝わったのだろう。兵士達は嬉しそうに笑ってバスケットを受け取った。「じゃ、俺はこの辺で戻るけど気をつけてアブエロまで行けよ」「はい、その……ありがとうございました!」「色々と疑問もあったけど、お前さんを信じてよかったよ」「取りあえず感謝だけはしておいてやる。……助かった」「ランガさんにこっちは任せて欲しいって伝えてくれ」 そんな風に商人や兵士達からの言葉を聞きながら、レイはセトの背に乗ってランガや騎士達が待っている場所へと戻るのだった。