第127話 野菜天ぷらですよ、エルフさん キッチンで、野菜を切りながらちらりと横を見る。 そこには白いまつ毛をしたエルフがおり、唇をとがらせて茄子へ切れ込みを入れていた。どうやらだいぶ集中しているらしい。 日も長くなり、窓の外はまだ明るい。扇風機の前へでんと寝そべる黒猫は大あくびをし、どこか平和な感じだと思わせる。 なんだろう、懐かしいという言葉が近いのかな。 野菜を切る音、それに当たり前のように人がいるのはひどく安心させられる。家庭的なもの、子供のころ決して得られなかったものを、彼女らは与えてくれているようだ。 そんな風に考えていると、くいと袖を引かれた。 見上げてくる少女は真剣な瞳をしており、ずいと切れ込みの入れた茄子を見せてくる。「あ、上手に切れているね。これなら均等に熱も伝わるんじゃないかな」「良かった。でもあまり茄子って好きじゃないの。ほら、ぎゅむっとした歯ごたえで、よく分からない味をしているでしょう?」 あ、そうか。マリーはまだ茄子の美味しさを知らないのか。 だったら今夜の野菜天ぷらを、きっと気に入ることだろう、などと内心で楽しみにしてしまう。「まあまあ、野菜はどれも身体に良いからね。そういえば夏休み中の学生を見かけたけど、魔術師ギルドでもそういう休みはあるのかな?」 そう尋ねると、少女は「うーん」と天井を見上げる。