オレは、第二騎士団長デズモンド・ローナン。昨年、ローナン伯爵家嫡男として家督を継いだ。貴族は、嫡男が総取りするシステムだ。そして、伯爵家は、上級貴族の部類に入る。伯爵家嫡男で、騎士団長で、外見も悪くなく、頑強。釣書だけ見ると優良物件のオレは、幼い頃からすこぶる女性に人気があった。だのに、どういうわけか、幼い頃からの婚約者は、オレを捨てて弟を選んだ。爵位を継ぐ予定もなく、外見が普通の、どちらかといえば体の弱い、平の文官である弟を。そこに存在したのは、二者択一だ。全ての好条件をマイナスに変えるほど、オレの内面に問題がある。または、女性全般は信頼に値しない。このどちらかだ。もちろんオレは、迷うことなく後者を選んだ。そして、その選択を後悔したことは、一度もない。