「? 何、これ……」 怪訝そうにしながらも、エリノアはひとまずその吊りランプを手に取って弟の部屋へ急いだ。「ブラッドー……」 木戸を静かに押し開くと、またそこも重苦しいほどに暗い。 辛うじて……窓際に置いた寝台の上で、エリノアの弟、ブラッドリーが身を起こし佇んでいるその輪郭が見えた。「……ああ、姉さん。お帰り」 声に気がついたブラッドリーがゆっくりとエリノアを振り返る気配があった。 ──途端──ふっと室内が明るくなる。「……あれ!?」 持っていたランプの光が急に勢いを増し、エリノアが瞬きをして驚いている。「……どうかした?」 弟の静かな声にエリノアは彼の顔見る。「え、っと……今何か変じゃなかった?」「そう?」 怪訝そうに問うも、弟ブラッドリーは青白い顔で薄く微笑んでいる。 エリノアは、不思議そうにランプを見ながら「壊れたのかな……」と首を捻りつつも──弟の寝台の傍に近寄っていった。サイドテーブルの上にランプと、リードから貰ったカゴを置くと、弟の顔を覗き込み、その額に手を当てる。「ブラッド、具合どう? ……あれ!? どうしてこんなに冷たいの!?」 触れた白い肌はいやに冷えている。エリノアは慌てて弟を布団の中に戻そうとするが──ブラッドリーはエリノアの腕を押さえる。「大丈夫だよ。……姉さんの手が温まりすぎてるんじゃないの?」「ええ? そ、そんなことは……」 戸惑うエリノアの手にブラッドリーは手を重ねる。 その手もやはりひんやりと冷たいが、弟は微笑を崩さなかった。「本当に大丈夫だから。心配しないで姉さん。……今日は特に気分がいいよ」「…………」