港を見渡せる大きな木の下で、セカンドとラズベリーベルの二人きりになる。 その事実に気が付いたラズベリーベルは、小さく声を漏らした。 次の《暗黒召喚》まで60秒。ラズベリーベルのよく知るセカンドなら、きっとこう言うはずだ。「さ、俺たちも帰るか」 ほらね、と。小さく笑う。 ラズベリーベルは、瞬時に覚悟を決めた。 いつものように胸に手を当て、深呼吸を一つ、沈黙を破る。「センパイ、折角来たんやから、ちょっちクーラの町をぶらついてから帰らへん?」 彼女は焦っていた。 先ほどのあんことの仲睦まじい様子を見て、居ても立ってもいられなくなったのだ。 ゆえに、このまたとない機会に、攻めの手を緩めることはない。「おっ、いいぞ。何処行く?」「うち商店街行きたいわ」「あいよ」 気兼ねないやりとり。まるで、友達のような。 これではいけない。ラズベリーベルはその距離感に心地良さを感じながらも、一人首を横に振る。 sevenとフランボワーズ一世の関係ならば、これでいい。だが、セカンドとラズベリーベルの関係ならば……彼女にとっては、このままでは駄目なのだ。「なあ、うち、セーラー服似合うと思う?」「どうした急に」「中学も高校もブレザーやったやん? うち、一回でええからセーラー服着てみたかってん」「あ、そうか。セーラー服ってクーラでしか売ってないのか」「せやねん!」「おし。折角だからな、買いに行こう」「うん! 折角やからな!」 セーラー服は、港町クーラの店売りでしか買えない装備だ。 これを口実にあわよくばデートをしてやろうというのが、ラズベリーベルが咄嗟に考えた作戦であった。