そうして祖父母と孫の会話が始まった。「は、はあ。奇妙な縁でして」「そうよね~、奈保里とも同じ年だし、知っててもおかしくないわよね~」 彼女です、とはさすがに言えないね、まだ。「……そうだ祐介、その頃の初音さんに関しては友美恵のほうがよく知ってるぞ」「え? そうなんですか?」「ああ、この街にやってきてすぐに娘……琴音ちゃんが入院した時、面倒見たのが友美恵だからな」「えっ!?」「そういえばそんなこともあったわね~、もう少し遅れたら危険な状態だったらしいけど~」 ファーストイヤーは初耳ってか。俺は思わず身を乗り出して友美恵さんに質問攻めをする。「な、なんで入院したんですか?」「え~と、たしか髄膜炎、だったかな~? ひとりでぐったりしているところを、アパートの様子見に伺ったら発見してね~」「えらい重病じゃないですかそれ」「そうね~、幸いにも早く処置できたから後遺症も残らなかったけど~。あ、でも~」「……なんすか?」「それまでの記憶がなくなっちゃって、いろいろ大変だったのよ~」「……へっ? まさか、初音さんははおやの記憶とかも、ですか?」「そうなの~。一時的なものじゃないかとはお医者さんは言ってたけど~、そうじゃなかったみたいでね~」「……ちなみに、琴音ちゃんが何歳の時ですか?」「ええっと~、確か六歳になったばかりのころ、だったかな~。誕生日のすぐあとだったようだから~」「……」 ということは、だ。 琴音ちゃんは、母親が離婚していたことを記憶に残ってない、と言っていたけど。 それってひょっとして、その病気のせいなんじゃなかろうか。「祐介、ここだけの話だが」 真之助さんが、突然真面目になる。「その時の初音さんは、こういっちゃなんだが、目に余るひどさだったんだよ」「目に余る……?」「ああ。いわゆる、育児放棄ネグレクトってやつだ」