そうなった原因は過去のものであり、あまり自分のことを話したがらない北瀬は、ごく自然と冷蔵庫から梅酒を取り出す。そしてテーブルにグラスを置くと、二人の女性たちも自然と席についた。「では徹さんが残業をあまりせずに帰ってくることを信じて」「乾杯……じゃないわね。えーと、遅くなったら薫子さんと遊びに行っちゃいますよ」「本当にごめんなさい。さっきからなかなか徹さんと連絡がつかなくて。たぶん置いて行かれないように黙っているんだと思います」 普通の人から見たら、いまの会話はまったく意味が分からない。だけど三人にとってはごく普通のことらしく、思い思いの表情を浮かべてから、ちりんとグラスの音を響かせた。 もう本当にさっさと寝ちゃおうかなと、薫子は密かに考えていたらしい。