「ベッドしかないではないか」「他の荷物はすべてアイテムBOXの中に入っておりますので、随時入れ替えて使用します」「不便のような、便利のような」「いいえ、これで十分暮らしていけますよ。それにこれ以上家が大きくなりますと、アイテムBOXの中に入らなくなってしまいますので」「よし! 決めた! 妾は、ここに泊まるぞ?」「ええ~っ! ちょっと、お待ちください。家族には獣人もおりますれば……」「旦那、俺達は外で寝るよ。流石に王族と一緒に寝るわけにはいかないだろ?」「そうだにゃ」 俺達の会話に、王女の護衛達が割って入ってきた。「殿下! わがままも大概になさいませ」「もう、其方等の話は聞かぬ故、何を申しても無駄じゃぞ」 王女とお付の護衛が言い争っているが、どう見ても王女の方が強い。 最終的には押し切られる格好になった。「本気ですか?」「無論じゃ! こんな面白そうな事を放っておけるか」「それじゃ、やむを得ない。ニャメナの小屋を出すので、そこで二人寝てくれるか?」「しょうがねぇなぁ。クロ助を泊めてやるよ」「恩を着せるんじゃないにゃ。元々ケンイチの小屋のくせに」「こらこら、喧嘩するな」 2人はいつも言い争っているいるが、互いをライバル意識しているだけなので、険悪ではない。「それでは、王女殿下。何のおもてなしもできませんが、それでよろしいですか?」「うむ、こちらが無理を言っているのは承知している故、気にする事はないぞ」 少々わがままだが、話が通じないタイプではないらしい。 まぁ、相手が相手だけに断れないよなぁ……。 突然やって来た、少々面倒なお客様にアネモネは不機嫌、プリムラは致し方なしといった表情をしている。 プリムラは王族の怖さを知っているからな。