「クロの凄さが理解出来た様だから次の説明に移るけど、紫之宮財閥は他にも、紫之宮の長女が居るだけでなく、その従妹は情報収集にかなり優れてるし、映像記憶能力を持ってる少女だっている。それに他にも気になる存在の情報があがってきてる。ハッキリ言って、紫之宮財閥の今後の伸びしろは半端じゃない」 アリスさんがここまで断言するという事は、間違いないのだろう。 今のネット社会、情報が命だ。 紫之宮愛さんに従妹が居るなんてことは初めて聞いたが、情報収集に優れているのであれば、かなり重宝ちょうほうされる存在だ。 ましてや映像記憶能力を未だに持っている少女が居るなんて……。 映像記憶能力は誰しも幼い時に持っている物だが、普通は成長していく過程で失われる。 それを失わずに今も持っているその少女は、貴重な存在と言えるだろう。 それもそのクロという男によって集められたという事か……?「だけど正直言えば、カイが平等院財閥に入れば、紫之宮財閥に遅れは取らない」「ならどうして――」「もしカイが平等院財閥に入れば、金髪ギャルはどうなるの?」 俺はアリスさんの言葉にハッとする。「紫之宮にはクロがついた。アリアにはアリスが居る。でも、金髪ギャルには? あの子には誰が味方についてあげられるの?」 そうだ……俺がもし平等院財閥に入れば、雲母はどうなる? 現在お嬢様学園に通ってるアリスさんやアリアとは違い、雲母はもう一般の学園に来ている。 つまり、普通に社会に出た時の有利な縁すらも、雲母に作る事は出来ない。 そんな中、紫之宮財閥が急成長すればどうなる? おそらく平等院財閥はアリスさんが居る限り、致命的な事にはならないだろう。 しかし、西条財閥はアリスさんの様な人間は居ない。 だから一番最初に被害を受けるのは、どう考えても西条財閥だ。「普通の人間や、中途半端な実力の人間じゃあ意味が無い。必要なのはクロやアリスと肩を並べられる存在。今その可能性が最もあるのは――カイ、君だけなんだよ。カイが味方についてあげなければ、西条財閥は終わる」 アリスさんはその全てを飲み込みそうなくらい大きく澄んだ瞳で、俺の目を見つめる。「だから、俺を平等院システムズに入れるわけにはいかないと……。ですけど、アリスさんはそれでいいんですか?」「カイが西条に入れば三つ巴は維持できて、互いに牽制しあえる。だから、アリスとしても好都合」 俺はアリスさんのその言葉に、違和感を感じた。 この人がただ雲母の心配をして、俺に西条財閥に入れと言ってるわけじゃあない様だ。 いや、雲母自身の事を心配もしてるんだろうけど……何か違和感がある。 おそらく、三つ巴を狙う以外の狙いがあるはずだ。「アリスさん……あなたの本当の狙いは何ですか?」 俺がそう尋ねると、アリスさんは一瞬驚いた表情をし、ニヤッと笑った。「やっぱり、カイは面白い。アリスの目的、それは――この汚れ切った社会を壊す事」 俺の耳元にまで口を寄せたアリスさんが、そう囁いた。