ちゅく、ちゅ、と口に咥えた指を吸う所作を、鉄面皮で眺めている。 傷口を舌が舐め、痛覚がじくりと指先から手の甲へと広がっていく。 自我を完全に忘れ、溢れる血を啜る姿は必死だ。 無我夢中の動きは、限界まで飢餓に苛まれていたのを知らせている。 口に溜まる唾液に溶けた血を、喉が嚥下し小さくこくりと鳴った。 飢餓が薄れたのか、しゃぶり付いていた指を離そうと、口が緩く開かれ赤い口腔がちらりと覗いた。 その色に、ゾクリ、と背に加虐心の興奮が走り、目を細めてしまう。「……っは、……」 短い息を切なげに漏らし、咥えていた指を口から離すと、もう一度、唾液をその喉は飲んだ。 目前で自分の生徒――虎杖悠仁は、沸いてくる飢えの衝動を耐えた表情で、忘我した行動に恥じたように視線を伏せた。