色々と考えてたら兄貴がさっきの話を蒸し返してきやがった。兄貴って意外としつこいんだよなぁ。 うわーどうやって誤魔化そう。全然思い浮かばねぇ。あー駄目だ怪しまれる。くっそ、こうなったらもう出たとこ勝負するっきゃねぇ。「お、オレ……実は、兄貴とか四天王とか……の伝記、とか、ちょっと書いちゃおうかなー……なんつって思ってたりして」 あーあ、終わった。完全にバレたわ。恥っず。「くだらねェ嘘ついてんじゃねえ」って殴られる。10000CL賭けてもいい。 兄貴は16歳とは思えねぇ眼力でオレを睨んでくる。オレは思わず目を閉じて歯を食いしばった。「――ナイスなアイデアじゃねェかプルム!」 が、飛んできたのは怒号でもゲンコツでもなくノリノリな言葉だった。「俺の伝記かぁ~、楽しみだなァ~」「う、うっす。楽しみにしとってください兄貴」「おう! あ、そうだ、やっぱインタビューとか受けた方がええんか?」「い、いや」「あ゛?」「そ……そうっすね。インタビューいいっすね」「そうだろうそうだろう」 ヤベーことになった。メモ取ってるフリして覚えとかなきゃマズいぞこりゃ……。「おっし。じゃあ何でも聞いてくれィ」「兄貴ぃ、仕事大丈夫っすか?」「心配すんなっての。今は休憩中だ」 兄貴、めっちゃ機嫌が良い。ニッコニコだ。伝記がそんなに嬉しかったんかな。 ……兄貴が喜んでるんだ、裏切るワケにはいかねぇ。オレは腹を括って、紙とペンを構えた。「じゃあ、まず兄貴はここに来る前は何してたんすか?」「チンピラ」「チンピラ!?」 最初の質問で驚愕の事実が判明しやがった! 兄貴がチンピラ!? あのカッケー兄貴が!? マジかよぉ! 今の今まで伝記がどうのこうのとか考えてたあれこれが頭ん中から一瞬で吹っ飛んで、オレは前のめりになって質問を続けた。「何すかチンピラって!」「いや、最初は孤児だったんよ。それがグレて浮浪児になって、色々ヤンチャして、結果がチンピラだ」「あっ、スラムで番を張ってたとか?」「そんな立派なもんじゃねェよ。盗んで奪ってその日その日を食いつなぐクソ野郎だった」「…………」