必死で脳内妄想をかき消そうとしていると、ラブストーリーさながらの突然さで玄関のドアが開く音がした。 その帰宅者は来客に気づいたのか、ドアを開けてから慌てたようにリビングへやってくる。「……ナポちゃん……」 我が妹、佑美のご帰宅だ。ナポリたんの前で仁王立ちをしてる。 目が血走っているのはなぜだろう。 ぎょっとしてるナポリたんを見るのは新鮮だ。 さすがになにやら感じたらしいが、少なくともそれがシンパシィでないことは間違いない。「……お、おう。佑美、久しぶりだな。お土産が……」「そんなことはどうでもいいの。ナポちゃんに今すぐ相談したいことがあるの」「はぁ……?」「このままだと私、誰も信じられなくなる。だからお願い、相談に乗って」「お、おう……」「ありがと。じゃあ私の部屋で」「お、おい、なんだいったいちょ、おい、土産が……」 拒否権もなく佑美に引きずられていくナポリたんを見て、俺も祖父母も唖然。「……どうかしたのか、佑美は」「なにやら、切羽詰まったような表情、してたわね~」「……さあ?」 男女という概念が信用できなくなったみたいで病んではいたけど、多分それの相談じゃないかな。 という言葉は飲み込んだ。 ………… ま、大丈夫だろ、ナポリたんなら。 佑美の悩みも、ちゃんと解決してくれるはずだ。 ………… …… なにやら佑美の部屋が騒がしいけど大丈夫かな。 大丈夫だよね。だって佑美とナポリたんはずっと……仲間だもんげ! ………… …… もう許してやれよ。 アーメン。「なんで祈ってるんだ祐介ぇぇぇ! 異変を感じたら助けに来い!」「あ。ナポリたん生存確認。よかったね」「よくないわ! もう百合の住処こんなところにはいられん! ボクは家へ帰らせてもらう!」「何があったのかは知らんけど、そのセリフはやめたほうが……」