そうした看護師としての強い想いは私だけが抱いているものではなく、同じ病院への採用が決まった菜実も淑子も同じように抱いていると思う。 その証拠に……私たちは桜吹雪の中、ベンチに座ってさりげなく下腹部に手を当てて顔を見合わせ微笑みあう。「やっぱり患者さんと同じ立場にならないと、わからないことがたくさんあるのね」「そうね、私はつわりが酷くて……揚げ物の匂いだけで吐きそうになっちゃって」「私は嫌いだったものが食べられるようになったのはいいんだけど、食欲が増しちゃって……太らないか心配」 三人とも妊娠三ヶ月を過ぎて、身体の変化や精神的な影響とか知識としてはわかっていたつもりだったことが本当の意味で理解出来ていなかったことに反省し、あらためて顔を見合わせて苦笑してしまう。 菜実は妊娠してからお気に入りだったハンバーガーショップのフライドポテトが食べられなくなってがっかりしてたし、淑子は逆に食欲が増して嫌いなものも食べられるようになったのはいいんだけど食欲が増したらしく今から出産後のスタイルを心配している。 もちろん、私だって二人とは違うけどいろいろと変わったかも……それにしても妊娠ってすごいよね。たった数ヶ月過ぎたばかりなのに女性としての成長というか、自分の身体に大切な命を宿しているんだと思うと他人への思いやりというか優しさを抱けるようになったし、言葉では知ってたけど『母性本能』って妊娠しないと本当の意味で理解なんてできなかったと思う。「でも……本当によかった。誰よりも早く妊娠を経験することができて」「うん、そうだね」 そう、目の前で同期の卒業生が何人も通り過ぎて行くけれど、その胎内に赤ちゃんを宿しているのは私たち三人だけだろうと思う。 女性として成長できたことが実感できて、同期の卒業生たちも早く妊娠を経験すればいいのに、なんてちょっとおせっかいな事を思ってしまう。 自然と私たちの視線がお互いの下腹部へ向けられる。私たちのお腹の中には、まだまだ人の形にはなりきっていない新たな命が日々成長して、私たちは無条件に深い愛情を感じてしまう。 私たちのお腹には大家さんの赤ちゃんがいる。そのことが私たちの日常を充実感に満ちたものにさせてくれて、同じ気持ちを共有できている私たちの友情をさらに強いものにしているように感じられてすごく幸せに思う。