さて、やってまいりました王都の道具屋。アインズヘイルとは何が違うのかといわれれば店の広さと客の数だろうか。ここ王都の道具屋はアインズヘイルとは違って店内にはお客さんが結構いる。違いはなんだ?店員か?こっちの店員は可愛い女の子だからか?それとも店の清潔感か?あっちは乱雑というか、ただ積み重ねただけのような並べ方だったしな。んー。店に入ってすぐのところには魔道具が陳列されているな。そっちはまあ、後でいいや。ぱっとみて珍しい物があるわけでもなさそうだし、汎用的なものばかりだ。やはり奥に行くと客の姿は無く、そこには錬金用かも怪しい用途不明の材料ばかり置いてある。魔力誘導板はともかく、振動球体などは本来なら何に使う為に置いてあるのだろうか。他の人が加工した物も見てみたいな。そんな中、俺はとある材料に目がとまった。『回転球体』……。おおう。これはかなり便利だろう!これで扇風機が作れるじゃないですか!風呂場に扇風機が置ける!熱い日に『あー』ってできる!それ以外にも使えそうだし、これは買いだな!値段は……魔力誘導板や振動球体と同じ一万ノールか。今店頭にあるのは7個。全部買い占めてもいいのだろうか。他は……「こんにちはー! 何かお探しですか?」おお!?他に何か無いかと顔を回したら目の前にさっきまでカウンターにいた女性店員がこちらに接近していた。カウンターには代わりに強面の店員が接客をしているようである。他の客がこちらをみているあたり、やはり彼女目当ての客が多いようだ。「ああ、えっとこの回転球体が欲しいんだけど」「こちらですか? 他には何かあります?」「いや、とりあえずこれをここにあるだけ買ってもいいかな?」「あるだけですね! 在庫もまだありますがいかがしますか?」「在庫はどれくらいあるの? 全部買ってもいいの?」「はい勿論! こんな売れ残、じゃなかった買っていただけるだけでありがたいです!」売れ残り……。確かに魔力誘導板といい、振動球体といいこれもだが普通の一般人は加工前では買わないだろうな。錬金術師が実験の為に購入するとか、その他の利用方法があるだろうし購入する業者はいるのだろうけど、この店のような個人の道具屋ではなく生産元に話が行くか。さらには個人で実験用に錬金術師が買いに来るとしてもは変わり者が多いと聞くし、研究をするにも薬学、アクセサリ、魔道具など多種に及ぶだろうから安定して売れるというわけではないだろうしな。店から出ると視線を感じて後ろを振り向く。すると、ウェンディとシロが俺をジト目で見ていた。「あー……また無駄遣いしてごめんな?」「いえ、ご主人様が必要だというなら必要なのだと思います。でも20個も必要だったのですか?」「いや、試作とか失敗した時とかあったほうがいいかなって……」「そうですか。可愛らしい店員さんでしたしね!」「ん、主、店員に目が眩んだ?」「え、ああそういうことか。違う違う。作りたい物の材料になりそうだから買っただけだって」ヤキモチだろうか?確かに可愛らしい店員ではあったけど、店員が近づいてくる前に買うことは決めていたしな。それに、五人を見ればまあ、失礼だが目移りするほどじゃないと思ってしまう。「それで次は何処にいくっすか?」「そうだな、鉱石とか宝石の原石が売っている場所に行きたいな」「旅先だからと使いすぎではないですか? 明日はオークションもあるのですよ」「あー……まあ、オークションは何か買いたい物があるわけでもないしな」めぼしい物があれば別だが、今のところどうしても欲しいというものがあるわけでもないし。「それに、一応俺もオークションに出品しているから多少は余裕が……」「主様ってお金の使い方荒いのね」「そっすね。豪快で自分は良いと思うっすけど!」「そうも言っていられないだろう。ただでさえ奴隷を5人も抱えているのだぞ?」いやまあ、今は安定して稼げてますし多少はね。それにこれはいわば先行投資だし、鉱石や宝石だってアクセサリーの材料だ。だから無駄遣いじゃないと思う。プレゼントするにしたってアクセサリー屋で買うよりもうんと安く済むし、さらには能力だってつくのだから得だと思う。つまり、俺は浪費家じゃない!まあ食材とか引き合いに出されたら終わりだけどね。だって美味しい物食べたいじゃん……。食に妥協したらダメだと思う。三大欲求は偉大なんだ!「ま、まだうん。大丈夫余裕があるし、仕事の経費みたいなもんだし……」「そういってご飯が一品減らないといいですね」「うぐッ」「ご飯いっぱい食べたい」「カハッ!」