まあ、多分、何かやむを得ない理由があるんだろうけど。「して、今日はなんの用だい? 生憎とボクたちは鍛錬で忙しいから、あまり長くは時間を割けないんだが――」「そうよ! マサムネ様を独り占めしようったって、そうはいかないんだから!」「マサムネ様は、あんたらなんかと話してる暇はないのよ!」「とっとと帰って頂戴!」 …………なんだこいつら。 マサムネが話し始めるや否や、いきなり門下生と思われる女たち十数人がわらわらと出てきて、えらい剣幕で口を挟んできやがった。「……はぁ……」 隣のアカネコが、小さく溜め息をつく。 なるほど、こいつ、このことを言ってたんだな。こりゃ確かに面倒くさい。「ごめんね、ボクの子猫ちゃんたち。これも道場には必要なことなのさ」 マサムネは何処か遠くを見つめ、悲しげな表情を作り、溜め息まじりに呟いた。すると、マサムネの後ろに群がっていた門下生の女たちは「きゃー!」と盛り上がる。 なんだこれオイ。「いつもこうなのか?」 こっそりアカネコに聞いてみると、彼女はゲッソリした表情で頷き、「厄介なことになる前に早う帰った方がよい」と小声で返す。 いやあ、流石に同感だ。 が……そうはイカの金玉。「ここ、道場破りって受け付けてる?」「ンぶっ!?」「ぷはっ!?」 あっけらかんと言うと、アカネコとマサムネが吹き出す。「そ、そんな聞き方があるか戯け!」 アカネコにバシッとぶたれて、俺はへらっと笑った。 マサムネの後ろの門下生たちは、ぎゃーぎゃーと騒ぎ出す。やれ「身の程を知れ」だ、「消え失せろ」だ、シンプルに「死ね」だと、もう言いたい放題だ。「はははは! 面白い! 本当に面白いよ、君……」 暫く笑っていたマサムネはそう言うと、門下生たちに振り向き、手を一振りした。すると、ざわついてた彼女たちは一瞬にして静かになる。 そして、マサムネは再びこっちに向き直り、沈黙を破った。「――ボクが受けて立とう」 それまでの嘘偽りの表情は、もはや見る影もなく。 一人の侍とでも言うべき、斬れ味鋭い眼光をした女が、こちらをじっと見つめていた。 アカネコと初めて出会った時を彷彿とさせる、命のやり取りをせんとする目。 マサムネもまた、刀に生きる一人なのだろう。 彼女のその覚悟に、俺は満面の笑みで応えた。