「我が殿は――淡白での。回数も少なく、あれでは活力に溢れる良い子が生まれるとは、私でも到底思えぬ」「それでも、公子様が生まれないとなれば、領の危機でございましょう?」「それ故、養子の話が持ち上がっておる」「側室様は?」「おらぬ……そもそも我が殿は、あれに興味がないのかもしれん」 どうも、不妊の原因は領主――子爵様にありそうな感じだな。「其方達は楽しそうだな。私は、笑って食事をした事などなかった……」「カナン様のご実家でもですか?」「私の父と母は、私をどこに輿入れさせるか、それしか考えておらぬ方々だったよ」「広く豪華な部屋に贅沢な料理。そして物言わぬ家族――私が想像するに寒々しい食事風景でございますね」「ほぼ合っておる。私が求めてきた女の幸せとは、いったい何だったのか……」 夫人は、湯船に浸かったまま、バシャバシャと顔を洗い始めた。「じゃあ、そういう事で」「待つがよい! 今の会話で何も思わんのか?」「いやぁ、私のような平民には、遠く離れた異世界の話のように思えますが。あまりにも住む世界が違いすぎますね」 残念ながら俺は、20歳過ぎた女の涙は信用しない事にしている。 彼女は長くしなやかそうな脚を上げて、その美しさを誇示しはじめた。「これだけ女が、無防備に肌を晒しているのだ、もうちと何かあるであろう?」 夫人は身体を捻ひねると、丸くて白い尻を持ち上げて、俺を誘ってくる――なるほど、金髪なので下の茂みも金髪だ。 いや、そんなことはどうでもいい。「いやぁ、全然。そんなに相手が欲しいのであれば、カナン様なら、よりどりみどりでございましょう? 例えば、騎士の連中とか……」「あやつらは、いざという時には借りてきた猫だ。何の役にもたたぬ。もう、私も小娘ではないのだ。この熟れた身体を持て余し、いったいどうすればよい?」「はっはっはっ、全く子供には聞かせられぬ話でございますなぁ。それでは、そういう事で」「待つがよい!! 女の、このような身の上話を聞いて、其方は何も思わんのか?」