その後、俺たちは敷地の中の景色を見て回った。 ありとあらゆるものに目を輝かせては新鮮な反応を見せるアルフレッドが面白くて、俺もつい時間を忘れて散策してしまった。 そして昼食をご馳走し、別れの時。 アルフレッドはしっかりと俺の目を見据えて、真剣な表情で沈黙を破った。「感謝のしるしだ。これを貴殿に」 彼がインベントリから取り出したのは、何処か見覚えのある一本の“矢”だった。「……まさか、絆之矢か」「左様。我が家に代々伝わる家宝、これをお譲りしたい」 とんでもないものが出てきた。 絆之矢――所謂「無限矢」である。 この一本さえ番えれば、何本でも矢を放てる。そういった超便利アイテム。当然、相当なレアドロップ品である。「いいのか? 売れば数億はくだらないぞ」 いや、前世で数億なのだから、この世界では数十億かもしれない。 断ろうかと考えていると、アルフレッドはニッと笑って口を開いた。「だからこそ。私の目の値段だ、これでは足りないだろうが、その分はこれから時間をかけて返そう」「……ははは! よし、受け取ろう」 清々しい男だ。 だからこそ。ああ、そうだ。彼の目には数億でも数十億でも足りないほどの価値がある。素直にそう思える返答だった。「また会おう」「ええ。その時は、ディーとジェイも」「ああ、楽しみにしている」 固く握手をして、別れる。 再び、夏季タイトル戦で――。