と、クリスティーナが驚おどろいた理由を告げる。「ああ。この家にいる間は隠かくす必要もないのかなと思いまして。髪の色を変える魔道具を外したんです。この髪の色でお二人と会うのは四年ぶりでしょうか」 そう語り、リオは軽く肩かたをすくめた。「……やはり髪の色一つでだいぶ印象は変わるものなのですね。こうして見るとかつての貴方あなたの面おも影かげがはっきりと重なります」「はい。リオ様です……」 フローラがリオの顔をじっと見てこくこくと頷く。「シュトラール地方では特とく徴ちよう的てきな髪の色ですからね。それはそうとまだだいぶ早い時間のはずですが、ぐっすりお眠りになれましたか?」「はい、ベッドの寝ね心ごこ地ちがとても良くて、おかげ様で熟じゆく睡すいしてしまいました。早く寝ねすぎたせいで二人揃そろって早く目を覚ましてしまいましたけど」 リオは少しこそばゆそうに、話題を逸らす。クリスティーナはそれに乗っかり、くすりと微笑んだ。「なら良かった」「リビングの灯あかりがついているのに気配がなかったので、アマカワ卿はお外にいらっしゃるのかなと思ったのですが、朝の訓練ですか?」「ええ。ちょうど終わりにしようかと思っていたところですが」「こんなに朝早くから、努力家なんですね」「日課になっているだけですよ」「そうでしょうか? 学院にいた頃、放課後に一人で剣の訓練をされている姿をたまに見かけました。図書館で熱心に勉強されている姿も」 クリスティーナはふふっと笑って当時を振り返る。「お姉様、実はリオ様のことをよく見ていらっしゃったのですね」 フローラが好奇心を覗かせて言う。当時はクリスティーナからリオとは関かかわるべきではないとよく釘くぎを刺さされていたことを思い出した。「よ、よく見ていたというか、私の行動範はん囲いと被っていただけよ。というより、貴方も私とよく一緒にいたじゃない」 クリスティーナは頬ほおを紅潮させて弁明を行う。「懐なつかしいですね。確かにクリスティーナ様のことは図書館でよくお見かけした記憶があります……」 リオは学院時代の記憶をたぐり寄せて語る。そして――、「朝食の準備をします。朝の外は冷えますから、家の中に戻りましょうか。温かい飲み物もご用意しますので」 と、剣を腰の鞘に納めながら言って、家の中へと戻っていった。