「エルンテの先兵よ。君たちはとても憐れに見える」「何故です! 何故これほど! 貴方、目が見えないはずなのに……!」「目が見えぬゆえに見えるものもある」「く、う……っ!」 鬼穿将戦、挑戦者決定トーナメント準決勝。 アルフレッド対ジェイ・ミックス。 勝負はまだ始まって5分と経っていないが、その結果はもはや明らかであった。「あの男への師事、即刻やめるべきだ。君たち姉妹のためにならない」「余計なお世話です!」「……話にならないか。ならば私が根本を絶つまで」「きゃあっ!」 圧勝。 そう言っても過言ではないほど、一方的な勝利。 審判によってアルフレッドの勝利が宣言されると、観客は俄かに沸き立つ。 しかし、勝者本人の表情は、依然として冷たく厳しいままであった。 アルフレッドは従者の案内で闘技場から去っていく。 その後姿を見ながら、彼の次の対戦相手となる女と、その師匠の男が語り合う。「ジェイは研究されていたな。アルフレッド殿に全てを封じられていた」「ああ。だが、お前は研究されていないだろう。ニューフェイスだからな」「うむ。奇襲し甲斐があるというものだ」「負けられない、というような切羽詰まった表情をしているが……あいつには少々かわいそうな思いをさせることになる」「ジェイに色々と語りかけていたな。何か深い事情がありそうだ。次の試合の前にでも、私が聞いておこう」「そうか。ところで、ストックは残り一つだが、大丈夫か?」「やれるだけやってみる。初出場で一勝できただけでも、私としては満足だがな」「まあ3週間でよくやったと思うよマジで」「ほお、珍しいな。聞いたかエコ。セカンド殿が素直に褒めてくれたぞ」「茶化すな。悪くない奇襲だった。一勝おめでとう、シルビア」「……うむ!」