夕食が終わった後、私はお兄様にニードルフェルトがまるで進んでいない愚痴をこぼした。
「オリジナルの図案が描けないから、そこからダメなんです。写真を見て作ろうにもなかなか上手くいかなくて…」
「ふぅん。その写真と麗華の描いた絵を見せてくれる?」
私は部屋から一式を持ってきた。
「これです」
「……なるほど」
お兄様はベアトリーチェの写真と私の描き損じがたくさん描かれたスケッチブックを見比べた。わあっ!お兄様に恥を晒した!やっぱり見ないで!
私はお兄様からスケッチブックを取り戻そうとしたけれど、その前にお兄様がサラサラとベアトリーチェの絵を描きだした。上手いっ!
「お兄様、絵のご趣味があったのですか?!」
「いや、特にそういうことはないけれど、まぁ適当に描いてるだけ」
はい、と見せられた絵は写実主義!凄いや、お兄様!
だったらと、試しに細かい図案を描いてくれるよう頼んでみると、お兄様はあっという間に私のお願い通りの絵を次々に描いてくれた。なんと!こんな身近に救世主が!
しかしなぜ同じ血を引く兄妹だというのに、これだけ才能が違うのか…。ちょっぴり嫉妬。