あっけに取られているとバルコニーからは当のエルフが現れ、そして手を取り合って階段へと歩き去ってしまうが……。「あれ、ザリーシュ、様?」 ぽつりと呟いた声は、あっというまに祝賀会の喧騒へと消えてしまった。 そう、サラリーマンである彼にとって出社時間は絶対である。 たとえ震災のときであろうと、ザッザッと列を成して出勤する様子には、ある意味で侍としての風格を感じさせたものだ。 まあ、今は風潮が変わりつつあるけれど……。 ともかく事前に了承を受けていた通り、2台ある馬車のうちひとつを使って戻り、大慌てで就寝することになったわけだ。 もしこれが土曜日であったなら、また異なる物語があったかもしれない。しかし明日の夜には魔導竜ウリドラが戻り、事態は加速してゆくだろう。