「何事だい!? 旦那ぁ」「プリムラさんや~い!」「なんですか? 変な呼び方をして」 訝しげなプリムラに後ろを向かせて、2人でひそひそ話をする。「実は、アネモネに初めての月のものが来たようでな……男の俺より女性の君から説明してもらった方が良いだろうし……」「まぁ! まぁまぁ! 解りました! 私に任せて下さいませ!」 プリムラがアネモネの所へいくと、しゃがみ込んで彼女に話しかけた。「それは、病気ではありませんから。2人で家の中でお話をしましょう」 不安そうに俺を見つめるアネモネを宥める。「大丈夫だよ、アネモネ。プリムラが教えてくれるから」「……解った」 あ~、とりあえず何を渡せば良いだろうか? 全く解らんぞ。シャングリ・ラで売ってる生理用品はオーバーテクノロジーなような気もするし……。 つ~か、どれがいいのかも、さっぱり解らん。 プリムラに聞くと、布が必要らしい。この世界で布っていえば麻布だ。シャングリ・ラで1m✕1mの麻布をポチッとする。「これで良いか?」「こんな上等な物でなくても……」「とりあえず、これしか無い。それと、これは痛み止めの薬だ。一粒飲ませてやってくれ」 彼女に鎮痛剤と水を渡して、家の中に入っていく2人を見送る。「はぁ……こういう時は、男は全く役に立たんな」 しかし、この世界の女は大変そうだな。俺の周りの女達が全くそんな素振りも見せないので、すっかりと忘れていたぜ。 プリムラは、どうしているんだろうか? 俺は、滝から流れてくる川の側でへたり込み、シャングリ・ラで買った缶コーヒーを飲む。 こういう時は缶コーヒーだ。甘い砂糖の味がストレスを軽減してくれる。 側にいる、ニャメナにも缶コーヒーを勧めてみたが、気味悪がって飲まない。 そこへ崖の上から、ミャレーとベルが戻ってきた。「にゃー! あれ? どうしたにゃ?」 うなだれている俺に、おかしいと思ったのだろう――彼女に事情を説明した。「あーにゃんだー獣人以外の人の、あの日かにゃー」「そういえば、獣人はあるのか?」 つい聞いてしまったが、こりゃセクハラかもしれん。だが彼女達があっけらかんと、俺に答えを返してきた。「ないにゃ」「ないのか?」「ああ、ないねぇ。旦那、賢者のくせに、そんな事も知らないのかい?」 だって賢者じゃないしな。それに他の世界からやって来た人間だし。 2人の話では、獣人に月のものはない。ただ、年に1回発情期のようなのが1週間程あって、その時にやると100%出来るらしい。 もちろん、獣人同士だけだが。普通の人間とは混血は出来ない。