静かな声で告げるヴォルフに、ダリヤは目を細く細くする。 自分の名付けセンスがないのはわかっているが、ヴォルフの名付けも大概である。「おかしくないですか、ヴォルフ? 魔剣として成立していないですし、破壊したのは本体なんですよ」「いや、そこは魔剣としての浪漫を名前にも求めないと」「その浪漫は、本当に名前にも必要なんですか?」「魔剣の名付けにも浪漫は絶対に必要です」 真面目な顔で言い切った彼に対し、ダリヤは魔封銀をすくっていたガラスのスプーンを、黙ってテーブルに転がした。 からんと裏表を返したスプーンに、今度はヴォルフが黄金の目を細める。「……ダリヤ、匙を投げることはないんじゃないかな?」「私にその浪漫は理解しがたいものですので」「ぜひ理解してほしい」「それはヴォルフが、自分一人でわかっていればいいじゃないですか」「いや、ぜひ君と共有したい。ここは俺が、詳細に明確に、魔剣の名付けの浪漫について解説しよう!」「ご遠慮します」 ヴォルフとも相容れない部分があるのだと、とても納得した日だった。