「あ、ごめん」
「…いえ」
ついでに荷物にも気がついてくれるとありがたいです。
「うわっ、この子すげーお嬢様っぽい!」
「髪、きれいに巻いてるね~」
げ。
「ねぇねぇ、どこの学校?」
後ろの男の子が話しかけてきた。耳にピアスを何個も付けている。チャラい。
「瑞鸞です」
「うおーっ、瑞鸞!マジお嬢!」
なにが面白いのか、全員が大受けしていた。
女の子達は笑いながらも私を値踏みしている。怖い…。
「ねぇ、名前なんていうの?」
「…吉祥院麗華です」
「名前もお嬢!受けるー!」
……こいつら。
席選びを完全に失敗した。いや、塾選びもだ。この吉祥院麗華、今までの人生でここまで粗末な扱いをされたことはない。
妊婦さん事件に続きこの扱い。今ならおみくじで確実に大凶を引く自信がある。
「やめろよ、可哀想じゃん。困ってるよ。瑞鸞のお嬢様は俺らとは違うんだから」
チャラピアスの隣の子が止めてくれた。女の子達も「そうだよ~、やめなよ~」とか言っている。ふん、本心じゃないくせに。
私はなにも気にしていませんよという態度で、問題集を見ているフリをした。今こそ何事にも揺れない座禅の心を!
それなのに、後ろのバカが私の髪を引っ張ったりしてちょっかいをかけてきた!よりにもよって私のこの巻き髪を!あんたなんて、世が世ならバスティーユ送りだ!
だいたい女の子の髪を引っ張るって、高校生のやることか?なんてバカなんだ。
そして講義が始まると、そのバカ達が私よりよっぽど頭が良かったことに、さらに心を抉られた。
私は家に帰ると、部屋の四隅に盛り塩をした。