「べつに戦闘ができないわけでは無いでしょう? ウリドラたちに気づけないような、弱い相手は襲ってくるじゃない」「そうだねぇ、ただ僕としては……分かるかな、男っていうのは限界ギリギリの戦いを求めてしまうものなんだよ」 まったく分からないわと言われ、そうですかと僕は頷く。 いやまあ、確かに分からないよね、ダンジョンへ求めている浪漫なんて。 さて、あれから幾日か迷宮を攻略しているけれど、大方の予想に反して今のところは順調だ。ただこの平穏も、たまーにで構わないから崩れてくれないかなぁ、とも思う。主に戦闘への浪漫のために。 今回の層の大きな特徴は、知性ある魔物の多いことがあげられる。 当然、敵の攻撃パターンは増し、その対処法を共有するミーティングをたびたび開いている。 弱点とも言える魔力増幅器官について、その破壊方法、倒してゆく敵の順番などなど。「それにしてもドゥーラは頼もしいわね。私たちの協力戦線は個性派揃いなのに、打ち合わせでうまく仕切っているでしょう?」「意外だったねぇ。彼女のレベルは低めだけど、統制力はあるみたいだ。たぶんだけど、回復役というのもあるんじゃないかな」 彼女の率いるアンダルサイト隊は、回復や障壁などのバックアップが中心だ。そうなると全体の状況を把握し、どのように援護すべきかの訓練を受けている強みを活かせる。 そういう意味で、回復役が全体をまとめるのは理想的かもしれない。 ドゥーラが皆へゴールを示し、そして能天気なゼラが肩の緊張をほぐす。夫婦漫才じゃないけれど、息ぴったりの連携だなと感心させられるよ。「もちろんそれも強力な火力があってのものだわ。私たち、ダイヤモンド隊、そしてガストンというおじいさんも。それがうまく全体を機能させているわね」 使いかけのノートに、少女の鉛筆がすらすらと踊る。 基本的な役割は、イブ及びゼラ隊による斥候、前面を守護するプセリ隊、後方で援護するドゥーラ隊、そして遊撃をする僕らの隊に分けられる。 敵の数と特性に応じた配置転換は、持ち前の柔軟さを持つゼラ隊の役割だ。 そこへマリーの立体的な地形変動を加えると、簡易的な砦ができあがる。やはりマリーは集団戦闘でこそ威力を発揮し、特に塔の監視者による索敵の貢献度は大きい。