ああ、椎茸は香り高くて世界でも有名だからね。 ときどき海外の料理番組で「シータケー」などと呼ばれ、なにやら違和感を感じなくもない。少し前に調べたことがあるけれど、思っていたより世界に広まっていて面白い。 さて、満足そうに食すウリドラは、なんとなく顔色が戻りつつあるように見える。今は汗を浮かべた健康的な肌色をしており、食事により血行が良くなったのかもしれない。 2杯ほど食し、お茶を飲んでからマリーは口を開く。「それで、どうしてウリドラは顔色が悪かったのかしら? また育児に疲れてしまったの?」「ふむ、その話は人の身にとって少々ややこしいぞ」 かつかつ白飯をかっ喰らい、そして「おかわり」とこちらへ差し出してくる。椀を受け取り、雑炊に使おうと思っていたご飯をよそう。「普通の竜であれば、卵から孵して栄養を与えるだけのはずよね」「ふむ、下級種のことか。あれは竜よりも爬虫類に近く、生物として世の理に成り立っておるからな」 となると魔導竜はまた異なる存在なのだろうか。 なんでも精霊に近しい存在であり、竜核なるものを体内に秘めることで、この世界に身を置いているそうだ。さらには竜核なるものには独自の世界があり、それぞれ異なる人格を……などと、もう僕にとっては異次元の会話だよ。 しがないサラリーマンである僕は、もくもく鍋をいただいていよう。「あ、そういう事なのね。私は半妖精だけど、あなたは純粋な妖精に近しいという事かしら」「近しいのう。いくら巨体であろうともわしらは飛べる。それは世の理に沿っておらぬ。しかし実在している以上は真実じゃと言える。要は世界を騙す技を、わしの子らに与えておったのじゃ」 ふうーん、と僕は気のない返事をした。 謎の多い彼女だけれど、話を聞けば聞くほど謎は深まるばかりだよ。と、ウリドラは何かを思い出したらしく、箸をこちらへ向けてくる。「そうそう、おぬしに言うておくことがある。今までずっと猫じゃったから言えなかったが……」「うん、なんだい?」 黒猫とはいえ表情豊かなせいで、だいぶ伝わっていた気もするけどね。 しかしウリドラはみるみる表情を険しくしてゆき、僕はビクンと背筋を震わせた。い、一体なにを言いたいのかな?