下にトウモロコシが3つ程出来かけているのだが、一番下を除き摘んでしまう。こうやって、1個だけに栄養を回して、糖度を上げるためだ。 ベルが、摘み取ったトウモロコシの山をクンカクンカしている。「へぇ~変わっている植物だね!」 アネモネが不思議そうにトウモロコシを手にとっている。「こういう野菜は見たことがないのか?」「ない!」「ウチもないにゃ」 この世界には、トウモロコシがないのかもしれない。デントコーンを売るだけでも儲かりそうだが……。 けど、種を渡したら、それっきりだな……う~ん。珍しい植物だからといって、種だけで何千万円も出してくれそうにないしな。 周りの雑草を抜いて、追肥と水をタップリとやる。滝から流れている川が近くにあるので、土が乾燥し過ぎるという事はないようだな。「アネモネ、植物に魔法を頼む」「む~! 成長促進グロウ!」 これを何回かやれば、すぐに食えるようにかるかも。「なんで、実を摘んでしまうにゃ?」「1個に栄養を集めて、美味しくするためだよ」「にゃ~、そんな贅沢な事、普通は出来ないにゃ」「そうだねー」 この世界の農法は、間引いたりせず結実させるだけ結実させる。 ならば、市場で売っているリンカー等も、適度に間引いて栽培すれば、もっと大きくて美味い実がなるのかもしれない。「ミャレー、森の中でリンカーの若木を見つけたら、掘ってきてくれないか?」「家の近くに植えるにゃ?」「ああ、あれは美味いからな」 あんな美味い果実が、森の中に普通に生えているんだからな。「解ったにゃ。でも、あれは虫だらけになるから、ちょっと家から離して植えたほうが良いにゃ」「ほほう……」 とりあえず、栽培してみないと解らない事も沢山あるな。 木に虫除け魔石となると、ちょっと贅沢な気もするし……でも、マジで黒山の虫だらけになるようなら、魔石が必要になるか。 だが、トウモロコシを見ていたら、ポップコーンを思い出して食べたくなった。 トウモロコシというと、網の上での焼きトウモロコシを想像するやつもいるかもしれないが、俺の地元じゃそんな食い方をするやつはいない。勿論もちろん、異論は認める。