身よりもなく泥水をすすって必死になって生きてきた自分は、いつだって“特別”に飢えていた。それは、拾われて寺に行っても同じ。自分を拾った男は確かに自分に多少の情を与えていたかもしれない。しかし、それだってその他の子供達と分け合ったほんのわずかに過ぎなかった。それでは足りないのだ。おまけにその子供達は自分に与えられた少しの情でさえ掠め取ろうとしてくる。何故皆自分の邪魔をする。自分はただ寒いだけなのに。死にたくないだけなのに。それの何が悪いというのか。短い人生の中で一度だけ、隙間風が弱くなった時がある。それは、先生の下で雷の呼吸を学び始めた頃だ。でも、それも一瞬でしかなかった。その後すぐに先生が連れてきた子供―善逸が来てから、俺の部屋には再び隙間風が入るようになった。