それからシャルちゃんアズールさん私の3人できゃっきゃうふふしていると、アランとカイン様がやってきた。 アランとゲスリーの話し合いはうまくいったのだろうかと思ったところで、カイン様の左頬が赤く腫れていることに気づく。 照れてるとかじゃなくて、あれは誰かに殴られたような痕のような……。 私は慌ててアズールさんに冷たい水と布を用意するよう指示を出して、カイン様の方に駆け寄った。「カイン様、その頬の腫れはどうしたんですか!?」 慌てる私にカイン様は困ったように笑う。「少し口を切っただけだから、大丈夫だよ」 と答えるカイン様だけど、いやだって、そんな……!? 誰にやられたの!? という気持ちで見るけれど、カイン様は困ったように笑うばかりで答えてくれそうにない。 ついで一緒に入ってきたアランの方を見ると、アランが視線を下げた。「悪い。俺のせいだ」 ええ!? ア、アランがカイン様に手を……!? いや、ありえない。アランが大好きなカイン様に手をあげるわけがない。 そう思ったところでアズールさんが水と布を持ってきてくれた。布を水で濡らしてカイン様の頬に当てる。 ああ、癒しの貴公子の顔に傷が……! とはいえ、そんなことぐらいで損なうような美しさではないのだけど、でも、痛々しいというか……。「一体、何があったんですか? アランのせいだって言われても、信じられないです」 と言ってみるけど、アランもカイン様も言うかどうか迷ってるような感じで口を閉ざしている。 そういえば、アランはゲスリーのところに行ってたはずだ……。「殿下が関わってますよね? 何があったのか話してくださいますか?」 私がそう言ってじっと睨み上げるようにカイン様を見ると、彼は困ったように笑った。「聞くまでリョウは諦めそうにないね。それと、これもありがとうリョウ。あとは自分でやるよ」 と、カイン様は観念したように微笑むと、カイン様の頬に押し付けていた濡れた布を自分で持ち直した。「大した話ではないんだ。アランとヘンリー殿下が口論になって、アランが手をあげてしまったのだけど、私が殿下をかばったというだけだよ」 マジで!? と思って確認のため、アランを見ると目に見えてしょんぼりしているので、カイン様の話は事実なのだろう。 でも、アランが何の理由もなく、突然手をあげるような人じゃないのは、分かってる。 そして相手はゲスリーだ。 おそらくカイン様を私の護衛につけてくれるかくれないかのことで言い合ってるうちに、ゲスリーのゲスリー節を聞いてしまったのだろう。 大好きなお兄ちゃんを殴る羽目になってしまったアランの顔は険しい。 許せん! ゲスリー!「殿下が相変わらずなことを言ったんでしょう! 私が言って、反省する人ではないですけど、殿下には苦情を申しておきますね!」「はは、ほどほどにね」 ほどほどだけじゃ私の怒りは収まりそうにないけども! それに……。「そこまでこじれたとなると、カイン様は殿下の護衛の任から離れられそうにないですね」 引き続き私の護衛に、と思ったけれど難しいようだ。でも、今いるメンバーだけでも心強いし。「いや、殿下からの許可はいただいたよ」 というカイン様からのまさかの話に目を丸くすると、カイン様が頬に当てていた濡れた布をとって、赤くなった頬を見せてきた。