「トドメを刺すか?」「おう!」 その大蜘蛛に近づこうとした瞬間、奥にあった巨大な岩が動いた。「おわっ! なんだこりゃ?!」「旦那! これって!」「ふぎゃー!」「あー!」 投光機の白い光に照らし出されたのは巨大な白い蜘蛛。俺たちが戦っていた蜘蛛より倍以上デカい。 小さい方と明確に違うのは目が赤いところか。そのデカくて赤い目が俺たちに狙いを定めているように見える。「旦那! こりゃ、メスだ!」 ニャメナが叫んだ。「メス? メスの方がデカいのか? それに、あんなデカさじゃ通路を通れないぞ?」「だから、オスが狩りをして、メスを食わせていたんだよ」 それじゃ、そのオスを瀕死にしてしまったら、あのメスはここで餓死するしかないって事か。 小さい時に、この洞窟へ入り込み、オスに食わせてもらってここまで大型化したのか。「おい! 逃げるぞ! 餌を運んでいるオスが死んだら、あのメスは直ぐに死ぬだろ」「そりゃそうだ!」「にゃー!」 俺達が踵を返そうとした刹那――巨大なメス蜘蛛は、瀕死に喘いでいたオス蜘蛛を長い脚で弾き飛ばすと、俺達の後方へ回り込んだ。「あ! クソッ!」「飯係のオスを殺られて、怒ってるのかね?」「そんなところだろ」「ウチ等を殺しても、どうせ死ぬにゃ」「畜生に、そんな理屈は通用しないだろ」 死なば諸共かもしれないが――ニャメナの言う通り、飯係のオスを殺られて怒っているだけだろうな。 俺は、アイテムBOXから再び殺虫剤を取り出した。「バリケード召喚!」 俺は手持ちの丸太バリケードを全部前方に並べた。 すると、一緒について来ていたベルが、バリケードを飛び越えて、真っ先に大蜘蛛へ攻撃を仕掛けた。 蜘蛛の繰り出す巨大な爪を華麗に躱かわすと、脚の上を走り赤い目へ爪を立てた。