「主、おなかすいた」「はいよ。悪いんだけどウェンディ持ってきてもらってもいいかな?」「かしこまりました。シロ、飲み物も運びますので手伝ってください」「ん」二人が出て行ってから少しの時間で戻ってくる。俺は仕事椅子に座ったままウェンディからサンドイッチを受け取ると、シロもウェンディからサンドイッチを受け取る。一口頬張ってみると明らかに俺が作るより旨い。薄く塗られたマスタードとは違う辛味がまた俺の食欲を刺激してまた一口と食べてしまう。「お味はいかがでしょうか?」「美味いよ! これは何個でも食べられそうだ」「美味しい。シロも何個でも食べられる」そりゃシロなら実際に何個でも食べちゃえるだろ……。「主、あーん」「またか? まだあるんだから自分で食べろよ」「あーん」「仕方ないな……」食べかけだろうが関係なくシロは俺の手元のサンドイッチをばくりと大きくかぶりつき、自分の持っているサンドイッチにもかぶりついた。「あ、あの……」「どうした? ウェンディも食べなって」「いえ、いただきますが、その。シロはどうしてご主人様の膝の上でお食事を取っているのですか?」「……」そういえばそうだ。以前の錬金室と違って、ソファーもウェンディの隣が空いているしシロが俺の膝の上に座る理由はない。「それにご主人様からあーんって。ずるいです」「? ウェンディもすればいい」「で、では交代ですね」「それは駄目。ここはシロの場所。特等席」「うー。ずるいです。交代制を要求します!」「それは出来ない。その代わりウェンディには一番奴隷の権利を譲る」「それは魅力的ですが、それはそれです! 私もご主人様にあーんってされたいんです」「それはすればいい。だけどこの場所は譲らない」「うーうー!」「いやシロ、お前も降りろよ……」「断る。たとえ主でもその命令だけは容認できない」何がお前をそこまで固執させているんだ。まあシロは軽いから膝の上に乗られても大して苦ではないんだが、ウェンディのうーうー言っている姿は何故か微笑ましくも、可哀想になるので退いてあげてほしい。別に俺がウェンディを膝の上に乗せたいというわけではない。決して。「ほらウェンディおいで」「うー! ご主人様からももっと言ってください」「いいからほら、あーん」「あ、は、はい。あーん」ウェンディは立ったままだが、これくらいならしてあげられる。俺の差し出した新しいサンドイッチを小さくかぷりとかじり、頬を押さえて幸せそうに咀嚼をするウェンディ。なんだろうな。いいのかな? こんなに幸せで。そう思いながら俺もサンドイッチをかじり、その美味さに舌鼓を打つ。「主、シロも」「はいよ。あーん」「あーん」シロはあっという間に二つ、もとい三つを平らげてしまっている。「ね、シロ。半分こしましょう? 片膝ずつにしましょう?」「や。ウェンディはお尻が大きいから主の片膝に乗れない」「うー! うー! 乗れますもん! そんなに大きくないですもん!」「や!」「うー!」ウェンディ、頼むからそんな涙目で訴えかけないでくれ。このシロの頑固さは俺でもどうにもできないんだ。あと残念ながら片膝に乗せるのは俺も無理だと思うぞ。出来なくはないだろうが、色々まずいと思う。「じゃあじゃあ一番奴隷として命令します。その膝を明け渡しなさい!」「ッや!」「うー!」「ははは……」このやり取りがおかしくて思わず笑いが漏れてしまう。「笑い事じゃないんです! ご主人様!」「はははは」必死なウェンディが余計に面白くて俺は終始笑っていた。ウェンディが必死な理由が俺の膝っていうのもツボだったのかもしれない。「はぁ、はぁ。あー面白かった。あとご馳走様でした」「ご馳走様。美味しかった」「結局座ることはできませんでしたし、味なんて殆どわかりませんでした……」