まだ全てを納得するには材料が足りないのだろう。 ただ、娘の晴れ舞台に、小さな拍手を送ることだけは、今の彼にもできた。 この親子の関係は、それほど心配しなくても大丈夫そうだ。満面の笑みでこちらに手を振るエコと、拍手を続ける彼の姿を見て、俺はそんなことを思った。「ところでセカンド殿。エコは奇襲戦法の名前を叫んでいないな。礼儀に反するのではないか?」「そんな礼儀はないぞ」「……? …………!? ハメたな!? またしても! またしてもぉ!」「香車ロケットを喰らえっ! とか言ってたな」「せ、セカンド殿ぉおおおおおお!!」「ごめんて。悪かったって」「久々に恥をかいたぞ! そ、それも、こんな大観衆の前で!」「もうしないもうしない」「嘘をつけぇ!」「……すまないが、自分を挟んで痴話喧嘩はよしてくれないか」