「それでは、アストランティアへ戻って、製材所を作る手配と、領主様のご依頼の家を組み立てる人員を確保いたしますので」 プリムラが大商人の娘というのは、実に都合がいい。 マロウ商会にしても、新しい領の開発にゼロから出資できるのは大儲けのチャンスだ。 しかも、俺とアキラのチートを使って、儲けられる要素が山程ある。「そうか、よろしく頼むよ」 親方はアキラの運転するユニ○ク付きのトラックで、アストランティアへ帰るが――。 帰り際、アキラに油を出してもらう。バイオディーゼル燃料を作るのに必要だ。 タダで大量にもらえるのに、使わない手はない。それと引き換えに、SUV車などをタダで貸しているのだ。 シャングリ・ラからオープンタイプのドラム缶を4つ買い、その中をマヨで満たしてもらう。「マヨパワー! んで、分離!」 アキラがマヨパワーを使うと、ドラム缶の中が瞬時に黄色いマヨネーズで満たされる。 チートパワーに相応しい信じられない光景。このマヨネーズをさらに分離して、油と澱に分離することができ、ドラム缶の中が、茶色の植物油で満たされている。 こうしてみるとマヨネーズの成分は、ほとんどが油というのが目に見える。 俺のシャングリ・ラとは違い、彼の力には対価が必要なく、ほぼ無尽蔵に湧く文字通りの歩く油田。 俺の力に負けず劣らずの強力な能力だ。 アキラに貸したプ○ドは、彼のアイテムBOXの中に入っており、移動の際の脚として利用される。 彼のアイテムBOXだが、あまり容量がないので、大きな材木などは入れることができない。 大量の大きな荷物を運ぶとなると、どうしてもトラックが必要だ。 以前なら、全部自分でやっていた仕事だが、領主になったのだから人を使うことを覚えないといけない。 それは俺の家族の全員から言われている。 元世界ではイラストレーターという個人でやる仕事をしていた俺が、この歳で生き方を変えるというのは中々大変だ。 心の中で及び腰になる俺だが――家族や、これから増えるかもしれない領民のために頑張らなくては。 アキラには、ユリウスが書いた手紙を、マロウ商会へ持っていってもらう、お使いも頼んだ。 マロウ商会を通じて、カダン王国の貴族たちに、ハマダ辺境伯領の手紙が届けられるのだ。 プリムラも、仕事が残っているらしいので、アストランティアへ戻る。 大工との交渉も彼女に任せているからな。 トラックの座席に3人乗り、護衛のニャレサという獣人は荷台に乗った。