さっきまで、どうやって彼女らと接触しようか、と悩んでいたからとうとう幻覚が? と、戸惑っていると、サロメ嬢が早く窓を開けて、という動作をしたので慌てて窓を開ける。「サ、サロメさん? どうしたんですか?」「今、時間大丈夫かしら?」 いや、それは大丈夫だけど。サロメさん、まさか、壁を伝って、ここまで上ってきたの? ここ二階なんだけど!? 私はとりあえずこくんと頷くと、私は一応周りの人影を確認してからサロメ嬢を部屋に招く。 カーテンをしっかりと閉め直すと、サロメ嬢は、やっと黒いフードをとった。「サロメさん、その、どうしたんですか?」 というか、多分見張りの目を抜け出してきたんだよね? まさか、さっき私が妄想したみたいに壁を登って……? さすがサロメお姉様……。 私が行かなくては2人を救えない! などと一瞬思いあがっておりましたのは、私の傲慢の極みでございました。 サロメお姉さまなら、私が出しゃばらなくたってお忍びで会いに来ちゃう。しかも壁を登って。そう、サロメお姉様ならね。「ごめんなさい、突然で驚いたわよね」 そんなさすがのサロメお姉さまはそう言って、申し訳なさそうに笑った。「いえ、大丈夫ですよ。あ、とりあえず椅子に座ってください。ちょっとテーブルの上が散らかってますけれど」 と言って部屋に案内する。 今は香水の開発で部屋の中に草花がたくさん散らばっているし、テーブルには小さ目の蒸留器が置かれている。「すごいわね。それに花の良い香り。バラの香りかしら?」 そう言いながらサロメ嬢が物珍しそうに蒸留器をみたり、周りの置かれた草花に目を向ける。「本物のバラは使ってませんが、バラの香りに似た樹木があるんですよ。今はそちらを使って、新商品の開発中です。もう少しで完成しそうなので、慰労会までには販売にこぎつけられそうです」 私はそう答えながら、飲み物を用意して、テーブルに置いた。「ちょっと待ってくださいね。焼き菓子もあるんです」 と言って、棚からお菓子を取り出そうとしたら、「そこまで気を使わなくても大丈夫よ。なんだか悪いわ」と言って遠慮してきたけれど、そのままクッキーを取り出す。「全然、気にしないでください。ただ私が、甘いものが食べたいだけなんです」 そう言って、この前市場で買ったウサギの形の可愛いクッキーをお皿に並べてテーブルに置いた。「これ、かわいいわね」「可愛いですよね。思わず買っちゃいました」 慰労会で学園内に出店するお店の下見で市場を回って思わず買ってしまったクッキー。 かわいいよねぇ。シルバさんが最近買収した菓子店なのだそうだ。 挨拶も兼ねて、伺ったけれど、慰労会の時は、ルビーフォルンのお酒を使用した大人のお菓子を作って販売する予定と聞いて、私も楽しみにしてる。 一つ手にとって口に入れるとさくっといい感じの感触で甘さもちょうどよくて、美味しい。