今や受付嬢だけでなく、ラーズたちも口をあんぐりと開けていた。 まさか除名された俺が金貨を出すとは思ってもいなかったのだろう。 ……ちなみに、昨夜の一件のせいで、これが今の俺の全財産だったりする。本当はもう十枚くらい金貨持ってたんだけどな……まあ、それはさておき。「おい、何を呆けている? 金は払う。早く神官を呼んでくれ」「は、はい……その、これだけの額をどこから……?」「その質問に答える必要があるのか?」「それは、これだけの大金ともなれば、出所を確かめる必要があると……」「犯罪で手に入れたとでも言いたいのか!? バカにするのもいいかげんにしろ!!」 怒鳴ると同時に、目の前の卓を思い切り蹴り上げる。 卓上の金貨が衝撃で大きく散らばった。 こちらの威におされた受付嬢が「ひっ」と肩を縮める。「ギルドを除名された貧乏人にはとうてい払えないとたかをくくってたんだろ? それでうやむやに終わらせるつもりだったんだろ? 残念だったな! ほら、これだけあれば足りないってことはないだろ、さっさと法の神殿にいって神官を呼んでこい! その席でこの金は綺麗な金だって証言してやるよ。それでいいだろ、受付嬢さんよ!」 攻撃的な姿勢を見せる俺に受付嬢がおびえた目を向けてくる。 毎日、荒くれ者の冒険者と渡り合うだけあって、ギルドの受付嬢は綺麗な見た目とは裏腹に胆力のある者が多い。中には冒険者顔負けの実力者もいる。 この受付嬢もその一人。 もし、俺が何ら正当な理由なく恫喝していたなら、いつもの澄まし顔であしらわれたに違いない。 だが、今回の件に限っては自分たちに非があるとわかっているのだろう。それが引け目となり、いつもの胆力を発揮できないのだ。 人間、自分が間違っていると思っている状態では、なかなか普段どおりに振舞えるものではない。まじめな人間であればなおのことである。 ――まあ単純に、受付カウンターという防壁がない状態で、俺の怒気を真っ向から浴びてびびってるだけかもしれないが。 なんといっても、今の俺はレベル六だからな!