紅のモンスター「背中を預け合え! まずは正面のモンスターからだ!」 神山に入山してから間も無くして、俺たちは早速モンスターの群れとかちあったのだ。今回の旅はブレイザーが屋敷に残るというもの。意外な事に、ブレイザーは育児に向いているそうだ。子供たちの人気ランキングでは二位。 因みに一位はナツだそうだ。年が近かったり、他の人間と違って色食街を経験している。そういった共通点があるからなのだろう。そんな関係もあるのだろう、だから春華も三位にランクインしているそうだ。 しかし、人気ランキングなんて作るとは……考えたイツキも人が悪い。 ランク制度の冒険者の中で生きる人間たちだぞ? そんなもの導入したら頑張るに決まってるじゃないか。本当にどういう頭してるんだろう、イツキって。「アズリー殿、お願いします!」「ほい、オールアップ・カウント10&リモートコントロール!」 この旅での俺とポチ、リーリアの役割はやはり後方での援護。 経験値向上の魔法は山中では厳しい。紅魔の湿原に行けば可能だろうけどな。道が狭いんだし仕方ない。 イデアとミドルスが戻った銀の安定力はやはり計り知れない。 先頭で戦うブルーツとベティーは一騎当千だし、小回りの利く春華が魔法士を助ける。リードとマナが後方を押さえ、イデアが定期的に攻撃魔法を繰り出す。そしてミドルスが前衛型の魔法士の本領を発揮している。 何よりも恐ろしいのが…………――――「カァアアアアアアアアアッ!!」 只今、ランクSモンスター、アサルトケルベロスの顎を三つともかち割った、子供からの人気ランキング最下位のライアンさんである。理由は顔が怖いから。なんて強くてなんて可哀想なライアンだ。「いいチームね」 仕事がないであろうリーリアが呟く。「だろ? 俺のお気に入りのチームなんだ」「あら、既に私もお気に入りよ?」 どうやらリーリアも銀というチームが気に入ったようだ。 まぁ、気に入っていなければヒターチまで付いて行かないよな。「はははは」「ふふふ」 こんなに輝いて笑うリーリアは新鮮だ。いや、最近本当に多いのだけど、未だ慣れないと言った方が正解か。 そんな事を考えていると、隣にいたポチが俺をちらっと見た後、銀の方を向きキリっとした顔付きで言った。「いいチームね」「二番煎じにも程があるだろう。それに、リーリアに全く似てないぞ」「えー、結構頑張りましたよ!?」「頑張っても似てないものは似てないんだ」「それじゃあ…………くーれふか?」 すると、ポチは口の両端を前脚で伸ばし、三日月型の口を作ったのだ。「いや、似てるけど……」 そう、それはリーリアが戦闘によって狂喜に染まった時の物真似。俺が言葉を濁すと、ポチもすぐにそれをやめた。リ―リアが振り返ってこちらを見ようとしたからだ。 どうやらポチもちょっと危険を感じたのかもしれない。 そうだ、リーリアと再会してからあの顔を一度しか見ていない。その一度とは、リーリアが悪魔化したビリーと戦った時。現代でも、これまで何度も一緒に戦ったというのに。 丸くなった……といってしまえば簡単かもしれないが、リーリアの心に何らかの変化があったのだろう。もしかしたら、それがジョルノの死なのかもしれない。 再びリーリアが銀の皆が戦う方を見る。 俺とポチは見合う。「流石に聞けないよな?」、「ですね……」というアイコンタクトをとるも、やはり気になるところだ。「ふぅ、アズリー殿。片付きましたぞ。先に進みましょう!」 ライアンの号令と共に、再び歩を進める俺たち。 今頃、レイナとナツ、そしてアドルフはランクSのための昇格審査を前に緊張しているのかもしれない。 しかし、昨日話しててわかったが、ナツの技術も相当高みに達している。トレースに魔法を教わり、イデアやミドルスに鍛えられた? いや、キーマンは恐らくフユ。あの二人でガストンから教わった知識を共有したのだろう。 つくづくあの爺さんに頭が上がらないな。 そしてレイナとアドルフ。あの二人も歴戦の戦士たちを最前列で見ていたのだ。ランクS昇格審査……受からないはずがない。 …………ん? 確かトウエッドの昇格審査だと、ライアンが言ってたよな? 戦魔国の昇格審査は六勇士や六法士がするのだろうけど……はて? トウエッドでは誰が審査するんだ?